こんなにあった! 全国に散在する[忖度道路]
塚田一郎・前国交副大臣の「忖度」発言で注目を集めた、“安倍・麻生道路”こと「下関北九州道路」(第二関門橋)。4月15日、現地で野党4党の合同チームによる視察・ヒアリングを終えた小川洋・福岡県知事と村岡嗣政・山口県知事、北橋健治・北九州市長を、記者が直撃した。
本州と九州を結ぶ、既存の「関門橋」と並行する「関門トンネル」に加えて、新たに計画が浮上した「下関北九州道路」。「なぜ第二関門橋の建設だけが特別扱いされたのか」という疑問に対する回答としては、説得力が不足していた。
「豪雨や積雪時の通行止めが理由というが、新たに第二関門橋ができても通行止めになるのは同じではないか。この程度の交通渋滞なら全国各地にある」と記者が指摘しても、交通量のデータが示されることはなかった。
そもそも第二関門橋は、海峡を橋やトンネルでつなぐ「海峡横断道路計画」の一つ。’87年の第四次全国総合計画(四全総)で打ち出されたもので、全国で6本あったことから「六大架橋」とも呼ばれていた。第二関門橋の事業費は橋梁だけで推定2000億円、関連道路を入れると3000億円。しかし、関門海峡にはすでに「関門橋」と「関門トンネル」があって、維持管理費はかかるものの交通量には十分な余裕がある。3本目となる第二関門橋の必要性が乏しいことは明らかで、福田政権時代の’08年に調査が打ち切られていた。
しかし第二次安倍政権が発足した’12年から「地元自民党議員が第二関門橋を口にし始め、打ち切りになったはずの事業がよみがえり始めた」(田辺よしこ下関市議)という。
第二次安倍政権が誕生した翌月の’13年1月。当時の下関市長は年頭の挨拶で、安倍首相の発言を紹介した。首相は「(自分が)総理大臣になったから(公共事業が増えて)下関は良くなりますよ」と強調、具体的事業として「第二関門橋」と「山陰自動車道」の建設を挙げ、「国交省OBの山本繁太郎知事(当時)が誕生したのだから必ずできます」と太鼓判を押したというのだ。
つまり、塚田前副大臣の忖度発言が飛び出す6年前に、首相自身が「第二関門橋の具体化は確実」と公言していたというわけだ。
もう一つの安倍首相“忖度道路”といえるのは、「山陰自動車道」。こちらも着々と工事が進んでいる。日本海側の過疎地域を通る山陰自動車道は費用対効果が低く、山口県内の全長150㎞のうち、開通区間は「萩・三隅道路」(長門市~萩市)のわずか15㎞にすぎない。
安倍首相の故郷・長門市を起点とすることから“安倍道路”とも呼ばれる萩・三隅道路を走ると、残り8割以上の100㎞で建設が進まなかった理由は一目瞭然だった。
「必要性を訴えて調査費がついただけ」と強調する両県知事に記者が「108路線の中でここだけが国直轄の調査費がついたが、他地域に比べて突出して必要性が高いというデータはあるのか」と聞いても、具体的な回答は返ってこなかった。
本州と九州を結ぶ「第二関門橋」は必要なのか
第二次安倍政権発足から計画が再浮上
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