なにが起きているかを知るシグナル。エセ民主主義化の兆候
選挙が終わっても劇的になにかがすぐに変わるわけではない。じょじょに変化してゆく。だからわかりにくいのだが、その兆候となることが明らかになっている。
1.権力を制限するものを抱き込む動き
権力を制限するものとは司法制度、法執行機関、諜報機関、税務機関、規制当局などである。たとえば最高裁判事の人事に干渉する、行政(警察など法執行機関は行政なので)の人事権を掌握するといったことである。
2.市民やメディアからの監視を排除する動き
具体的にはメディアや人権団体、市民団体などへの規制強化や買収、逮捕、訴訟などである。相手をフェイクニュースと呼んだり、時には恣意的にフェイクニュース認定できる法律まで用意したり、ジャーナリストの取材を制限したりするこりである。
独裁化が進んだ国ではジャーナリストが暗殺されることや、ネット世論操作で攻撃し炎上させることも行われている。政権党や国家元首が、政府を批判するメディアをフェイクニュースと呼ぶようになったら要注意だ。同様に文化人への弾圧も行われる。
これらは直接行われることもあれば、間接的にメディアの広告主や市民団体の支援者に働きかけることもある。
3.敵対するものを潰す動き
政敵を排除するためにネット世論操作でスキャンダルを捏造することはよく行われる。
4.選挙方法の変更
選挙のルールを変えて次の選挙で勝ちやすくする。選挙区の変更や投票の制限を行ったりする。
5.極論主義の広がりと市民の政治活動の活発化と人権軽視の傾向の同時進行
極論主義はすでに世界中に広まりつつあるが、それが政治活動、政治参加に結びつき、並行して人権軽視の風潮画広がると危険である。極論主義は人権を軽視する傾向がある。
現在の民主主義は行き詰まっており、新しい民主主義を考え作る動きをしないと、エセ民主主義を止めることはできない。これまでと同じ民主主義を維持することが難しい時代に入っている。
◆シリーズ連載「ネット世論操作と民主主義」
<取材・文/一田和樹>
いちだかずき●IT企業経営者を経て、綿密な調査とITの知識をベースに、現実に起こりうるサイバー空間での情報戦を描く小説やノンフィクションの執筆活動を行う作家に。近著『
フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器 日本でも見られるネット世論操作はすでに「産業化」している――』(角川新書)では、いまや「ハイブリッド戦」という新しい戦争の主武器にもなり得るフェイクニュースの実態を綿密な調査を元に明らかにしている