この春、東京を代表する2つの「メンズ百貨店」が相次いでリニューアルオープンを迎えた。
その2店舗とは「新宿伊勢丹メンズ館」(新宿区、3月16日リニューアルオープン)と「阪急メンズ東京」(千代田区、3月15日リニューアルオープン)だ。
東京のメンズファッションを牽引してきた両店舗。今回は、その2店の歩んできた歴史を振り返りつつ、今回の改装の特徴を押さえていこう。
この春相次いでリニューアルしたメンズ百貨店の1つ・阪急メンズ東京
「らしさ」をテーマに百貨店の王道を極める「新宿伊勢丹メンズ館」
新宿伊勢丹メンズ館(ISETAN MEN’S)の前身となる「伊勢丹男の新館」は1968年9月に伊勢丹新宿本店本館の北側に位置する新宿靖国通り沿いに日本初の「男性専門百貨店」として開業。都心で勤務するビジネスマンを主なターゲットとし、全国唯一の業態として東京ばかりか新宿へと出張した際に買い物をするビジネスマンの姿も見られるほどであった。
その後、2003年9月に耐震工事に合わせて約35年ぶりの全面リニューアルを実施。「伊勢丹メンズ館」としてグランドオープンした。開業当時の伊勢丹メンズ館は同社が得意とし、伊勢丹新宿本店でも人気を集めるブランドの垣根を排除した独自企画の売場「自主編集売場」を導入。ラグジュアリー性の高い空間を構築することで「ファッションの伊勢丹」を印象づける店舗づくりを行っていることが特徴であった。
今回の大規模リニューアルは2003年9月のメンズ館誕生以来約15年ぶりとなるもので、新ステートメントに「男として、そして、人として」(As a man, and As a human)を掲げ、館内にメンズ館らしさを表現した「SI」と称するアート作品を展示するなど、“○○らしさ”を叶えるメンズファッションストアを目指す。売場面積は9,900㎡、2020年の目標年商は500億円。2018年3月期の同店の売り上げは約450億円で、約1割増をめざすことになる。
新宿伊勢丹メンズ館。正面入口は花園神社の前になる
今回改装が行われたのは主に1階、2階、4階、6階。館内に入ると「自分らしさ」についての43人の文体練習が記された巨大な書物が目に入る。これが先述した「SI」の1つで、同店がテーマの1つとする「○○らしさ」にちなみリニューアル企画としてブックディレクターの山口博之氏がディレクションをおこなったものだという。また、2階は売場の真ん中にDJブースが鎮座するという個性的な内装が目を惹く。
売場は以前からの高級感に加えてより一層「伊勢丹らしい高感度な空気」が感じられるようになり、その雰囲気に圧倒させられる。地方百貨店で購入したジャケットを着た筆者は何となく「普段着では肩身が狭い」気分となったが、個性的なアート作品(SI)たちがそうしたピリっとした空気を少し和らげてくれるようにも思えた。
売場において気付かされるのが、以前よりもオーダー商品とメンズ化粧品が充実していることだ。とくに市場の拡大が続くメンズ化粧品については、体験ブースの新設に加えてソニーの肌解析システム「BeautyExplorer」を使用した肌測定体験サービスも導入されている。
このほか、伊勢丹本館でもお馴染みというべきプロモーションスペースやコミュニケーションスペースが増設されたほか、国内最大級というオーダーシャツコーナーやコンシェルジュサービスなども新設されており、以前にも増してファッションビルとは一味違う「百貨店らしさ」、そして「伊勢丹らしさ」が感じられる店づくりとなった。