「アイスホッケー界の日ハム」を作ったチェアマンの「夏は野球、冬はホッケー」の総合型スポーツクラブ化構想

日本のスポーツ文化をどうしていくのかの議論を

安永オーナー

2019年3月31日、日本製紙クレインズの最後のファン感謝デーで挨拶をする安永敦美オーナー兼代表

――クレインズに関しては、札幌でスポーツ関連用品販売会社を経営する茅森健一氏がチームの受け皿となる「東北海道アイスホッケークラブ合同会社」を設立したことを明らかにしました。小林チェアマンは存続の危機から再生したH.C.栃木日光アイスバックスの運営会社「栃木ユナイテッド」前会長です。 アイスバックスは、チーム成績は低迷しているものの、光と音のド迫力演出など注目を浴び、週末のホームアリーナは常に満杯。昨季の観客動員数は約3万3000人と過去最高を更新。「アイスホッケー界の日本ハムファイターズ」との異名を持つまでにいたりましたが、クレインズにアドバイスをするとしたら、何があるでしょうか? 小林:20年の歴史を作ってきたアイスバックスは7万人都市の日光市だけではなく、栃木県内、県外からの支援があり、このように広く薄く支持を集めるのが重要ではないか。ただし、1999年の前身の古河電工の廃部を受けて創設したアイスバックスと比べても、よりも苦しくなった状況があるのは事実。 アイスホッケーという競技そのものが、さまざまな要素に規定されて、ハードルがかなり高いスポーツであるという事実もあるうえに、少子化、他のスポーツの台頭の影響といった競技人口の激減がある。クレインズ問題は日本のスポーツ文化をどうしていくのかを議論するきっかけにもなる。

目指すひとつの形は、FCバルセロナのような「総合型スポーツクラブ」

――アイスバックスにも多くのスタッフが関わっています。運営会社の代表取締役はセルジオ越後氏。セルジオ越後氏がスポーツマーケティングのプロとして北海道日本ハムファイターズなどのファンマーケティングに関わった日置貴之氏を招聘するなど、野球やサッカーなど、さまざまな分野の知恵が集まっています。これまでの1スポーツのチームから脱却するきっかけかもしれません。 小林:日本のスポーツ文化もまだ道半ばです。欧州のような地域に根ざし、地域活性化の原動力になるようなスポーツクラブができていません。地域に根ざしたスポーツクラブの目指すひとつの形はサッカー、バスケットボール、ハンドボールのチームを持ち、住民を中心とするファン18万人をこえる会員の会費で成り立っているFCバロセロナのような「総合型スポーツクラブ」。 たとえばJリーグは「百年構想」のなかに「サッカーに限らず、あなたがやりたい競技を楽しめるスポーツクラブをつくること」「「観る」「する」「参加する」。スポーツを通じて世代を超えた触れ合いの輪を広げること」とありますが、約30年経ってもサッカーという枠組みにとらわれていて「(サッカーに限った)サッカークラブ」を脱却できていない。 「総合型スポーツクラブ」であれば季節や選手の適性によって選手は複数のスポーツに参加することができる。たとえば、サッカー選手もアイスホッケー選手との兼業ができるようになれば、ホッケーどころか、スポーツ全体の裾野も拡大するのです。少ないパイを取り合っても仕方がない、これからは柔軟な姿勢が求められるのです。 実は、H.C.栃木日光アイスバックスの運営会社「栃木ユナイテッド」という名称も「総合型スポーツクラブ」を念頭においたものなのです。ただし、現実にはそれぞれの競技がタテ割りで交流の壁があり、なかなか動き出さなかった。いまこそ、動き出す時期ではないでしょうか。 たとえば、アルビレックス新潟はJリーグのほか、プロバスケットボール、プロ野球独立リーグにもチームがある。夏はプロ野球で活躍し、冬はアイスホッケーで活躍する、二刀流の選手が出てきてもいいでしょう。 <文・写真/松井克明(八戸学院大学講師、地方財政論)>
八戸学院大学地域経営学部講師。行政書士・1級FP技能士/CFP。Twitter IDは@katsu84
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