今泉太爾氏
最後に、工事をする場合どのような業者に依頼するのが良いのだろうか。住宅のリフォーム業者にお願いしてトラブルになったという声もよく聞くだけに、慎重に選びたいものだ。通常、業者の選択は複数の業者に見積もりをとった上で、コストと内容面で比較する。しかし、今泉氏は、それ以前に注目して欲しいポイントが3つあると指摘する。
ひとつ目は「建設業許可の免許を持っていないリフォーム業者は排除すべき」というものだ。一般的にはあまり知られていないが、リフォーム業者には資格が不要で、「今日からリフォーム屋になる」と言えば素人でも勝手に名乗れてしまう。そしてそれなりのホームページを作れば、建築の知識がなくても仕事が舞い込む。
悪質なリフォーム業者がトラブルを繰り返している背景には、このような事情があるという。「リフォームも建設事業の一貫です。少なくとも最低限の資格として建設業許可を持っていない会社には、安心して任せることができないと考えてください」(今泉氏)
2つ目のポイントは、リフォーム経験だ。建築業の許可さえ持っていればよいかというとそんなことはない。リフォームは一軒一軒、オーダーメイドで必要とされることが全く違う。そのような応用力が求められる現場では、経験が物を言うこともある。
「特に、普段は新築しか建てていない工務店や、せいぜい自社が建てたお客さんの家の修理くらいしかしていない工務店では、その対応力に不安が残ります」(今泉氏)
最後の3つ目は、実際のリフォーム現場の見学だ。
「過去の事例や、いま手がけている仕上がり中の案件を見せてもらうのが良いと思います。施工中でも、完成しているものでも構いません。所有者の許可があれば見せてもらえるので、見せてもらえないということは、何か事情があるはずです。
『いまはやっていないので』などと言われたら、『ではいつ見せてもらえますか?』と聞いてください。何か月も見学できる現場がない業者は、ほとんどリフォーム実績がない、または施工品質に問題があり、OBとトラブルが多いなどなど、リフォーム施工能力に問題がある可能性が考えられます」(今泉氏)
今泉氏が断熱リフォームを手がけ始めたのは、10年以上前の2008年頃から。当時は断熱の重要性を認識しているリフォーム会社は、ほとんどなかったという。現在は徐々に増えてきているというが、まだまだ少数しかいない。そんな中でも上記のポイントに合わせて適切な事業者を選び、断熱リフォームをすることで、1年を快適に過ごしてもらいたい。
◆ガマンしない省エネ 第13回
<文/高橋真樹>
ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。環境・エネルギー問題など持続可能性をテーマに、国内外を精力的に取材。2017年より取材の過程で出会ったエコハウスに暮らし始める。自然エネルギーによるまちづくりを描いたドキュメンタリー映画
『おだやかな革命』(渡辺智史監督・2018年公開)ではアドバイザーを務める。著書に『
ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)『
ぼくの村は壁で囲まれた−パレスチナに生きる子どもたち』(現代書館)ほか多数。