鉄道業界のブラックバイト、人身事故の対応で授業に行けないことも。首都圏学生ユニオンが小田急と団体交渉

 学生による労働組合「首都圏学生ユニオン」は、アルバイトの待遇改善を求めて、小田急電鉄と団体交渉を行っている。1月から始まった団交も4月5日で3回目を迎えた。これまでの交渉で、業務の準備時間を勤務時間として認めてもらうといった成果を上げているという。  鉄道事業は、多くの人の足を担う重要な事業だが、駅員の約3割はアルバイト。しかも小田急は、アルバイトを大学生もしくは専門学校生からしか採用していないという。ユニオンは、学生アルバイトが、時給1100円で過度な責任を負わされていることを問題視している。

人身事故の対応で授業に行けないことも

 同社のアルバイト募集要項によると、朝のシフトは6時15分から9時、夕方は17時から20時、深夜は21時から25時となっている。学生バイトの中には、朝働いてから授業に出るという人も少なくない。  しかし、人身事故といったトラブルが発生すると、2~3時間の残業を強いられる。小田急のみならず、接続している路線でトラブルが起きると、運転再開に関する問い合わせに対応したり、振り替え輸送を利用する大勢の旅客対応に追われたりするからだ。  首都圏学生ユニオンに加盟するアルバイトの学生は、これまで「朝勤務で輸送障害が発生して、午前中の授業を休んだ」、「夕方勤務だったが、家に帰れなくなり、翌日教科書がない状態で授業を受けた」ことがあったという。突然、残業を強いられるせいで、学業に支障が出ているのが現状だ。  首都圏学生ユニオンの栗原耕平さんは、学生が突発的な残業に対応しなくてもいいよう、人員配置を見直してほしいと訴える。 「小田急は、トラブル発生時に学生が残業せず帰ってしまえば、改札前に長蛇の列ができるなどサービスの質は低下することを認めています。正社員を増やして、学生が残業しなくても対応できるようにする必要があると思います」

着替えの時間を勤務時間に参入していない

 着替えや準備の時間が勤務時間として認められていないことも問題だ。学生バイトは、駅に出勤し、制服に着替えてから仕事に就く。また点呼の前にトランシーバーやダイヤグラムを取りに行くといった準備をする。これらの時間は勤務時間に算入されず、賃金も支払われてこなかったという。  小田急は過去2回の団体交渉で、「点呼前の準備業務を指示していない」「文書による業務指示がない」ことを理由に、準備時間を勤務時間に算入することを拒んでいた。しかし4月5日の3回目の団体交渉では、準備時間も勤務時間であることを認めたという。組合員は、これまで支払われてこなかった分の賃金を受け取ることになった。  しかし未払い賃金がアルバイト全員に支払われるわけではない。組合員のいる管内のアルバイトに対しては「適切な対応をする」と回答したものの、実際に支払うかどうかはわからないという。また、組合員のいる管内以外の駅で働くアルバイトに対しては、なんら対応が取られない。  さらに、着替えの時間については、小田急は「自宅や学校から制服を着て来ても構わない」と回答しており、未だに勤務時間に算入していないという。
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責任の重い鉄道バイト、時給1100円は妥当?
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