銅は今や「希少資源」となってしまった
供給サイドの問題としては、以下のようなものがある。
・鉱石品位の低下が近年著しく、大規模露天掘り銅鉱山の鉱石品位は0.2%にまで低下している
・鉱山が発展途上国の熱帯雨林など、生物多様であるばかりか先住民族が住むような地域にシフトしてきている
・採掘規模の拡大によって深刻な環境破壊が起きている。人権・労働条件そして腐敗などの問題から地域住民や国際NGOなどの反対があり、開発期間が長期になってきている。開発費の高騰なども
ちなみに、銅の地殻中に存在する量は55ppm。これに対して年間2000万トンの生産量というのは、あまりに多すぎる。「ベース・メタル」と呼ばれてきたものの、実は“レアメタル中のレアメタル”と言ってよい状況になっている。
EVのリチウムイオン電池に使われる「コバルト」の安定供給は難しい!?
そのほか、EVの普及に大きな影響を受ける銅以外のレアメタルといえば、リチウムイン電池の正極材に使われる、コバルト、ニッケル、マンガンだろう。
コバルトについては、遍在性と希少性が高い。特にコンゴ民主共和国への遍在性が65%と異常に高く、近年「ラテライト型」と呼ばれる、採掘に伴う環境負荷が大きいニッケル鉱床の開発が増えている。そのことにより、その副産物として採掘されるコバルトが多くなっていることが問題だ。
コバルトの地殻内の存在量は25ppmと、希少性が非常に高い。年間生産量は十数万トンで、銅に比べると2桁少ない。それにもかかわらず、2030年の世界の需要量はEVのリチウムイオン電池用だけでも約30万トンと予測され、安定供給は厳しいと考えられる(*5)。
リチウムイオン電池用コバルトの割合は、総需要量に対して2006年に20%、2016年で51%だったが、2020年には62%と予測されている(*6)
EV用リチウムイオン電池の急速な需要増によって、スマートフォン用電池に必要なコバルトがひっ迫することを恐れたアップル社が、2018年2月にコンゴ民主共和国で直接資源確保に動いたことで世界に衝撃を与え、価格が急騰したことは記憶に新しい。
機器別のコバルト使用量をみると、スマートフォン5~10g、タブレット30g、ラップトップ100gに対して、EVは10kg。桁違いに多い。