技術が進歩するほど、それを支える金属の需要が増える
ニューカレドニア、ゴロー鉱山のニッケル・コバルト採掘現場
次世代の「エコカー」として、電気自動車(EV)が世界的に急速に普及する勢いだ。これに対して筆者が疑問に思うことがある。EVは、運転する環境では「エコ」といえるが、その生産過程においては決して「エコ」とはいえないのではないか? ということだ。
EVの生産には、その原材料として金属資源の需要が膨大な量になる。このことによって鉱山の規模が拡大するとともに、サプライチェーン最上流の採掘・選鉱工程における環境・社会に対する影響は極めて大きくなっている。
EV以外の分野でも、世界の金属需要は膨大な量になっている。今後、さらに先進ロボット、電気自動車、再生可能エネルギー、IT機器、IoT、AI、5Gなど、技術が進歩するほど金属需要は増える一方だ。しかし、地球上(特に陸地)の資源には限りがあり、需給ギャップが予測されている金属、つまり「枯渇」が懸念されている金属も多い。
まずは「ベース・メタル」(社会の中で大量に使用され、生産量が多く、さまざまな材料に使用されてきた金属)と呼ばれてきた銅。
需要サイドから見ると、2018年の2400万トンをベースとして年率3.5%伸びるとした予測によると、2030年には総需要3650万トンに対して供給能力は2900万トンで頭打ちになり、750万トンの供給不足となる(*1)。
このような需給ギャップの主な原因としては;需要を大幅に増加させるエンジンの電気自動車(EV)と太陽光、風力発電等再生可能エネルギーだ。当然ながら、EVの銅使用量はガソリン車の3~4倍にもなることを認識すべきだ(*2)。
太陽光発電に必要な銅はメガワット当たり2.45~7トン、陸上風力発電で2.54~6.77トン、洋上風力発電で9.5トンになる(*3)。
さらに中国の銅消費量は世界の40%を占め、なお高い伸びを示している。それにもかかわらず国民1人当たりの銅消費量はまだ6kgで、日本やドイツなど先進諸国の1/2~1/3。今後さらに消費拡大すると予測され、大きな懸念材料となっている(*4)。