取材データから判るのは、山本の慌てぶりと警察との連携だ。応対した私服刑事たちは、人当たりこそ穏やかだったが、明らかに山本陣営の意を受けて動いていた。
「双方の詳しい話を聞きたい」と言いながら、筆者だけが警察車掌の中に一時間以上も留め置かれ、半ば軟禁状態に置かれたことがその証左だ。
両者が結託しているとまでは言うつもりはないが、山本は地元選出の代議士であり時の防衛副大臣である。警察が山本の意向に沿って「目障りな取材者」を排除すべく動いていたことに疑いはないだろう。
取材の自由や国民の知る権利を守ることより、地元の政治家の顔色を窺う警察の姿が浮き彫りとなった。
前述の通り、
直当て取材は疑惑から逃がれようとする政治家を直接追及することのできる貴重な機会であり、
疑惑の真相究明、そして有権者・国民に真実を伝えるために有益かつ必要な手段だ。しかしその取材自体を選挙妨害として通報され、警察も呼応してしまうとなると、自由な取材活動ができず、有権者が投票判断する際に必要な情報が届かなくなる。
「候補者がどのような団体と関わりを持っているのか、どのような団体から支援を受けているのか」これらの情報を有権者に提示することは報道の役割だ。報道の自由・取材の自由の侵害は、国民の知る権利を阻害し国民の利益を損なうことに繋がる。
時の防衛副大臣が自身の疑惑を追及する取材者を虚偽の通報によって警察に逮捕させようとしたことは、虚偽告訴罪にも該当し得る重大な問題である。そもそも、
直撃取材で統一教会との関係を追及され“自己防衛”のため警察を使う防衛副大臣とはシャレにもならないが。
衆院選神奈川4区は新人の早稲田が当選。進次郎の応援も及ばず山本はまたしても選挙区では次点となったが、比例復活に救われ4度目の当選を果たした。
同年11月1日召集の特別国会の首相指名選挙で第98代内閣総理大臣となった安倍晋三は、全閣僚を再任(第4次安倍内閣)。筆者の直当て取材に「選挙運動の妨害だ」と過剰反応した山本朋広も防衛副大臣に再就任した。これは、小野寺防衛大臣(当時)に何かあった場合、防衛省を統括するのは、
「一介のジャーナリストの直撃取材に狼狽し、警察に逮捕させようとした人物」になるということだった。
取材を妨害し警察を呼ぶ。山本陣営の対応は、筆者が長年対峙してきた取材現場における各カルト団体の反応と酷似するものだった。
第48回衆院選は自民党が単独過半数を大きく上回る284議席を確保。公明党は34から29へと議席数を減らしたものの、自公で313議席を占め、引き続き
安倍一強の状態が継続する。
ここから
政権と統一教会との恥ずべき関係がさらに顕著となる。衆院選の大勝で改憲へひた走る
自民党安倍政権とそのバックアップ部隊として連動する教団の連携がいくつも露見したのだ。
11月初め、まず動きをみせたのが
統一教会2世信者組織・勝共UNITE。衆院選直後に「総選挙の結果を受け、勝共UNITEでは11月3日(金・祝)、文化の日に、若者による『改憲2020実現大会』を行います! 東京、仙台、福岡の3ヵ都市で同様の大会を開催するほか、10ヵ都市でも一斉演説を実施予定!」とSNSで発信。
そして告知通り、1946年の日本国憲法公布から71年となる17年11月3日、勝共UNITEは全国各地で憲法改正を訴える集会や街頭演説を行った。そのうち、東京と福岡での改憲集会には国会議員が来賓として登壇した。
勝共UNITEによる『改憲実現2020大会』のポスター(勝共UNITE公式サイトより)
東京での改憲集会『改憲2020実現大会』は
議員会館のすぐ裏手に建つ永田町の星陵会館で開かれた。「若者による改憲大会」を掲げる同大会の主催は『改憲2020実現大会実行委員会』となっていたが、実行委員長は
世界平和青年連合の松田幸士会長であり、
国際勝共連合と勝共UNITEが後援という完全な教団イベントだ。
国際勝共連合の公式サイトの年表にも、この改憲大会は「勝共UNITEが改憲大会を開催」と記載されている。