直撃取材に警察を呼んだ“自己防衛”副大臣<政界宗教汚染〜安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第8回>
2017年10月に行われた衆院選、そこから年末にかけて統一教会と政治家との関係が一層可視化された。
本稿では、同教団への忠誠ぶりが露見した防衛副大臣への直撃取材の顛末を中心に、衆院予算委筆頭理事による教団2世組織改憲集会での“激励”、そして大都市圏で連続開催された1万人信者集会への自民党議員の派遣など、同時期のトピックを記載する。
第3次安倍第3次改造内閣の発足から約2か月後の2017年9月28日、安倍晋三総理大臣は衆議院を解散。第48回衆議院議員総選挙は翌10月10日公示、22日に投開票となり、選挙戦に突入した。
この機に筆者は、質問書を無視し続ける防衛副大臣・山本朋広(神奈川4区)への直撃取材を行う機会を窺った。選挙運動期間中は、逃げ回る政治家に直当て取材する絶好の機会だからだ。
SNSをチェックすると山本は、大船や鎌倉など同選挙区の主要駅周辺で連日選挙活動を行っていた。
第7回で記述したように、山本には統一教会との昵懇関係が次々に発覚。世界平和国会議員連合への参加、有明1万人信者集会における教団幹部や「マザームーン」韓鶴子総裁への媚び諂い、教団引率によるアメリカ外遊とその“献身”ぶりは群を抜いていた。
複数回に渡って質問書をFAX送信したが、一度も山本サイドから回答は得られていなかった。山本事務所の政策秘書は、質問書を読んだ山本から「答える必要はない」との指示を受けたと証言している。であるならば、なぜ「答える必要がない」のか、直接本人に訊いてみるしかない。
また、山本の後援会『紅志会』と『山本朋広後援会』については教団の政治組織・世界平和連合の丸抱えとの情報もあり、有権者の投票判断にかかわる一連の疑惑を山本に問い質す必要があった。
山本が立候補した神奈川4区ではそれまで、浅尾慶一郎(元みんなの党党首、2017衆院選前に自民党に入党も未公認のため無所属での出馬)が盤石の地盤を築いており、山本は京都2区から鞍替えした2012年の衆院選以降2度の国政選挙で、いずれも浅尾に敗れている。(2度とも比例復活当選)
17年の衆院選神奈川4区は、出遅れた希望の党の風間法子はさておき、浅尾と山本、そして立憲民主党公認の新人・早稲田夕季との三つ巴と目されていた。しかし選挙戦終盤、産経新聞が浅尾と早稲田の優勢を報じたことから、自民党本部の選対は選挙戦最終日2日前の10月20日、人気が高い小泉進次郎筆頭副幹事長の応援演説をブッキングした。
小泉進次郎が応援演説に来る二日前の10月18日夕刻、自民党の幟がはためく大船駅モノレール改札口周辺。
山本の選挙チラシを配る運動員の中に、統一教会の国際祝福2世(外国人信者と日本人信者の合同結婚式カップルから生まれた2世)と思しき青年を見かけた。そこで「家庭連合の人?」と訊いたところ「いや僕は全然関係ないです」と即答、却って不自然さが際立った。
改札前でチラシ配りと声かけを行う山本副大臣に直撃取材を行った。
統一教会の韓鶴子総裁に花束を渡している画像がネットに出ている件を訊いてみたところ「ネットに?」と戸惑いを隠せない様子。有明での同教団イベントへの来賓出席については「まあ、いろんなイベントには出ますので、別に統一教会に限ったことではなく」と言葉を濁す。事実関係についても「それ僕は観てないので分らないですね。ネットはフェイクニュースもあるので」と明言を避けた。
記事を書いた本人だと名乗り、名刺を渡して質問を続ける。筆者からの質問書に「答える必要がない」と政策秘書に指示したことについては「いや、見てないですね」と秘書の証言との食い違いを見せた。
教団からの支援の有無には「いいえ」と否定。後援会と同教団との関係を尋ねると、一旦ズボンのポケットに捻じ込んだ筆者の名刺を取り出し「取材であればちゃんと事務所を通してもらっていいですかね、今選挙活動中なので、活動をしたいのでやめていただけないですか」と告げ、筆者に背中を向けた。
「国会議員として答える義務があると思う」「7月にアメリカへ行かれましたよね」「有権者の投票判断に必要だと思うので統一教会との関係を伺いたい」
無視を決め込む山本に質問を連続して投げかけた。すると都合の悪い質問に辟易したのか、山本は傍らのスタッフにこう指示した。
「警察を呼べ」
その後も山本の姿をカメラに納めつつ取材を継続した。すると防衛副大臣は、苛立ちを露わに「録画をされたりとかしてるんでしょうけど、そういう行為もやめていただいていいですか」と詰め寄ってきた。
疑惑の候補者への直当て取材
「マザームーン!」防衛副大臣を直撃
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