相次ぐ労働組合員の逮捕。「関西生コン以外の組合にも弾圧が及びかねない」と弁護士も危惧

逮捕への抗議行動

 労働組合員らの度重なる逮捕に対し、弁護士からは“不当な弾圧ではないか”という疑問の声が上がっている。逮捕者を多数出したのは、「全日本建設運輸連帯労働組合(連帯ユニオン)」の関西地区生コン支部。通称「関生(かんなま)」。セメントやコンクリート業界で働く人が加盟する労働組合だ。  昨年8月9日から今年2月18日に渡り、延べ56人が逮捕された。同組合と提携する協同組合の組合員も計7人が逮捕されている。逮捕容疑はいずれも恐喝未遂や威力業務妨害だ。これに伴い、排外主義者たちがYoutubeやブログで関生への批判を繰り広げている。“関生は犯罪集団である”というイメージが流布しているのが現状だ。  しかし労働問題に詳しい指宿昭一弁護士は「正当な組合活動が刑事罰に問われるのはおかしい」と指摘。関生を一方的に糾弾する風潮に疑問を呈している。

協同組合は値崩れを防ぐために価格交渉

 2017年3~7月、滋賀県東近江市で清涼飲料水メーカーが倉庫建設の工事を実施した。工事を請け負ったのは、大和ハウス工業の子会社である大手ゼネコンのフジタ。生コンクリートの製造業者が共同受注・共同販売を行う「湖東(こと)生コン協同組合」(滋賀県東近江市)は、同社に対し、協同組合に加盟する業者からコンクリートを買うよう求めた。滋賀県警はこの組合の行動を「恐喝未遂」とした。  しかし指宿弁護士は、正当な協同組合の活動の範囲であると指摘する。 「協同組合が、組合に加盟する企業から購入してほしいと求めることは何ら問題ではありません。営業活動の自由の範囲で、刑事罰に問われるのはおかしいと思います。関生と関係のある協同組合を狙いうちした弾圧ではないでしょうか」  中小企業等協同組合法では、規模の小さな事業者が協同組合を結成し、共同で購入・生産・販売を行うことを認めている。もちろん建設会社がより安いコンクリートを購入しようとするのは当然のことだが、コンクリートの値崩れを防ぐためには、協同組合による活動が不可欠になる。  組合に加盟しない事業者が価格を下げてゼネコンと取引をすれば、価格競争が激化し、砂利や砂といった粗悪な原材料を混ぜたり、加水したりした低品質のコンクリートが出回る危険がある。また価格競争は、従業員の労働条件悪化にもつながる。それを防ぐためにも、事業者が協同組合を結成し、足並みを揃えて価格交渉をする必要があるわけだ。  協同組合はあくまでも中小企業が結成する組織で、関生は労働組合だ。しかし両者は、生コンクリート産業の健全化のために、協力して活動してきた。

「ストライキは憲法で保障された働く人の権利」

 関生をターゲットにした「組合潰し」と言えるものは他にもある。  それは、関生が2017年12月、近畿一帯でストライキを実施した件だ。狙いは、セメント輸送や生コン輸送の運賃を引き上げることだった。大阪府警はストライキに関わった組合員を「威力業務妨害」の容疑で逮捕した。指宿弁護士はこの逮捕も不当なものだと指摘する。 「憲法28条では、労働者の権利として、『団結権』、『団体交渉権』、『団体行動権』が認められています。労働組合を作って、経営者と交渉したり、ストライキをしたりする権利が保障されているわけです。本来は、ストライキで刑事罰に問われることはありませんし、損害賠償を請求されることもありません。ストライキが刑事事件になるのはきわめておかしいと思います」  このストライキをきっかけに、業者団体である大阪広域生コンクリート協同組合(大阪広域協)と関生の関係は悪化。大阪広域協組は、関生を指弾する排外主義者らに接近するようになった。
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「労働組合活動に警察や国家が介入した重大事件」
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