しかしながら、今回示された基本計画の、そのほとんどの内容について、実はパチンコ業界では既に実施済みであるか、もしくは実施を想定した準備をとうの前に始めている。
こう書けば、「な~んだ、対策と言っても出来レースじゃん」と思う方もいるかも知れないが、筆者は、この対策群をパチンコ業界が既に実施または実施を予定していることには、敬意を表すべき点も多々あると思う。
具体的に、平成31年度内に推進すべき事項は、現時点ですべて「クリア済み」であり、平成33年度までに実施すべき内容においても、現時点で、まったくの手付かずということも無い。
社会的な逆風に晒され続けたパチンコ業界である。
国会で、本格的にIR法案が議論され始めた頃から、その批判や攻撃の矛先は、世の中の人たちの一番身近にある「パチンコ」であった。その批判や攻撃に対し、パチンコ業界は真摯に向き合い、行政(主に警察庁)との二人三脚のもと、依存問題対策に対しては出来得る限りの先手を打ち続けた。
業界内部からの反発も根強くあった。「そもそもパチンコはギャンブルではなく娯楽」という建前論を振りかざす業界関係者もいれば、民間産業の商行為に行政が強く介入してくることに不信感を強めた人たちもいた。
しかし、パチンコ業界は、自らの取り巻く商環境が悪化していく中においても、身を削り、時代を生き抜くための踏み絵を踏み続けた。
全国のほとんどのパチンコホールが加盟する、全日本遊技事業協同組合連合会(全日遊連)の阿部恭久理事長も記者会見を開き、パブコメで示された基本計画案にパチンコ業界に求められる項目が多岐に渡っていることについては、
「そうした問題以外は、実施済み、もしくは進行中の案件がほとんど。盛り込まれるであろうことは事前に対応してきたので、特に新たに取り組まなければならないものは、あまりないと思う」(遊技通信webより抜粋)
とコメントしている。
もしもパチンコ業界が、なんら依存問題対策を推進もせず、今回の基本計画を急遽実施せねばならぬ状況になったならば、その対策の多さと、そこに費やされる時間や資金等により一気に空中分解していただろう。