ブラジルの極右大統領、ボルソナロ勝利の影にもあった、「ネット世論操作」

ボルソナロ大統領

ボルソナロ大統領の当選にもネット世論操作の影が……  photo/Bloomberg via Getty Images

ラテンアメリカおよび世界において存在感のあるブラジル

 ブラジルはラテンアメリカ大陸で最大の面積、最大の人口を擁し、ほとんどの南米の国と国境を接している。世界最多のポルトガル語人口であり、ラテンアメリカ唯一のポルトガル語を公用語とする国だ。経済規模も大きくGDPでは世界8位となっている。いわゆるグローバルサウスを代表する国のひとつだ。 『Russia: Playing a Geopolitical Game in Latin America』(Carnegie Endowment for International Peace、Julia Gurganus)を元に同国の基本的な情報をおさらいしてみる。  多くのラテンアメリカの国がそうであるのと同じようにブラジルも欧米からの関心は薄く、ロシアや中国から干渉を受けている。ブラジルがBRICSの一翼を担っていることもあり、ロシアはそこを通じて関係を深めようとしている。  BRICSについて簡単におさらいしておこう。2011年に南アフリカ共和国が参加し、かつてのBRICsからBRICSとなった。BRICSが、ブラジル、ロシア、インド、中国という新興国の頭文字を取った言葉であることをご存じの方は多いと思う。単なる新興国を指す言葉だけでなく、首脳会議や高レベルの政府関係者の会談が定常的に行われており、協力はさまざまな分野に広がっている。  BRICSの経済規模は拡大を続けており、世界への影響力は今後広がると考えられる。現在世界をリードしている各国のうち、ヨーロッパの多くの国は国土面積や資源が豊富ではなく人口も多くないが、BRICS各国は国土が広く資源も豊富で人口も多いという共通の特徴を持つ。欧米と敵対し、経済制裁を受けているロシアから見るとBRICSは未来につながる切り札のひとつになり得る。たとえば2014年に国連でロシアのクリミア侵攻に対する非難決議の際、ブラジルはロシアの立場を支援し、決議に反対した。

中露との関係が深まるブラジル

 ブラジルはラテンアメリカ各国の中でもロシアとの貿易量が多く、2016年には43億ドルに達している。中国との関係も深まっている。中国は以前からラテンアメリカから物資を輸入していたが、近年になってインフラへの投資を拡大した。ブラジル北部に港湾を作ったり、ブラジル国内3位のエネルギー会社の株式23%を保有していたりする。  21世紀初頭、ブラジルは好景気に沸いていた。そのおかげで2014年にはワールドカップ、2016年にはオリンピックを実施できた。  ブラジル最大のメディア複合体The Globo Networkはテレビ、ラジオ、紙、ネットを持っている。テレビ局は122の関係会社があり、広告市場も押さえている。新聞では販売部数2位と8位の新聞を有し、ポータルサイトG1は莫大なページビューとユーザを誇っている。ライバルはUOL Networkである。  ブラジルはサイバー犯罪でも世界の先頭を走っている。2017年のアカマイテクノロジーズの調査結果によると、ブラジルはサイバー攻撃元としては世界3位、攻撃先としては世界2位なっている(ちなみにどちらも1位はアメリカ)。中南米最大のスパム発信元としても知られている(参照:『2018年度中南米CSIRT動向調査』一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター、2019年3月7日)。
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インターネット利用者世界第5位のブラジル
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