皮肉なことにヴェオリアがピッツバークでのコスト削減を大いに宣伝し、
2015年1月にフリントの水道の仕事を獲得しようとしていた。同年2月にヴェオリアはフリントの水質に関する一か月の4万ドルの契約を得た。もっと広範囲の仕事を請け負えば、ピッツバークで行ったような大幅なコスト削減が可能だと提案した。
「ヴェオリアはピッツバークで新たな収入源を見つけ効率化をはかり年間550万ドルの削減を実現した」とフリントの入札に書いた。ピッツバークでのヴェオリアのプレゼンテーションで同社は「支出を制限する財政管理、説明責任の強化、オペレーションの効率化が可能な部分を特定によって、水道事業の収支に直接的な貢献をした」と説明した。
しかしヴェオリアがフリントで仕事を獲得しようとしていたまさにその時、フリントで健康被害の危機は進行中だったのだ。2014年4月に市が水源をヒューロン湖からフリント川に変更し、腐食コントロールを怠った結果、水道水の鉛濃度が急上昇した。デトロイト北西の小さな町の住民は、2014年の夏以来、異臭と変色した水でシャワーをあびた後に発疹したり、水を飲んで嘔吐したなどと訴え助けを求めていた。同年10月ジェネラルモーター社は、鉄部品を腐食してしまうフリントの水の使用を中止した。
ところが、ヴァオリアがフリントでの仕事を始めたとき、その時十分に表面化していた鉛問題に取り組まなかった。その代りに、自身を「世界トップレベルの環境ソリューションを提供者」と宣伝し、フリント市議会公共事業委員会への
中間報告でフリントの水は安全だと発表した。高まりつつあったフリントの水質の懸念を黙殺し、鉛問題には触れもしなかった。
フリントの住民は茶色く濁った水を公聴会に持参したにも関わらず、同社はフリントでは水の変色はよくあるとと公共事業委員会を安心させた。「変色が水が安全ではないということではない」と報告した。ヴェオリアはもしそれが問題だとすれば、非常に敏感な一部の人々の問題で「どんな水にも過敏に反応してしまう人は存在する」と報告した。
2015年3月、ヴェオリアはフリント市に水質報告書を提出し「求められた水道水の基準を満たしている」と結論した。それでも同社は水の変色を防ぐために塩化鉄(III)の量を増やすことを提案した。ミシガン州司法長官ビル・シュッテが起こした訴訟によると、塩化鉄(III)は腐食問題を付け加えただけだった。「被告の指示で塩化鉄(III)を増やした結果、水道水は大幅に危険なまでに酸性になった」と訴え、「直接的な結実としてフリントの水危機は継続し悪化した」と主張した。
「なんたる混乱」とミシガン州司法長官特別アシスタントでこの裁判の代理人でもあるノア・ホールは嘆く。
「『技術者が何かを間違えた』という話ではない」「ヴェオリアは崩壊しかけた建物に入って『私たちにとっては大丈夫』と言ったようなものだ」
事実、鉛危機は数えきれない数の鉛中毒、12を超えるレジオネラ疾患による死亡、生殖能力の低下と極めて深刻な被害を町全体にもたらした。
ヴェオリアの広報担当ブラークが『インターセプト』に送ったeメールは「フリント市の指示のもと、ヴァオリアの分析は水の消毒に伴う副生成物のレベル、変色、味と異臭問題に焦点を当てた」と鉛問題が同社のフリントの仕事の中に含まれなかったことを強調した。
ブラークは
フリント水諮問委員会からの公式な報告書はフリントの現在の危機にヴァオリアの責任はないとしたとも付け加えた。しかし諮問委員会のメンバーであるエリック・ロスステインは報告書の結果について電話でインタビューに答えて、諮問委員会はヴェオリアの責任について直接検討していないとし「私たちの報告書はヴェオリアを非難してもいないし、責任を免除してもいない。ヴェオリアと私たちの議論は非常に限定的で周辺的なことだけだった」「私たちはヴェオリアを全く精査していない」と語った。