過去の無料HPサービスの終了と、失われる人類の情報資産
収益力の低下、寂れたサービスに人材を割り当てることの無駄。この先、サービスが盛り返すこともないだろう。営利企業であることを考えれば、妥当な判断だと言える。
しかし、サービスの終了によって失われる人類の情報資産は大きい。言うならば、10年分ほどの日本中の書籍が、一気に消滅するようなものだ。その時期に書かれた情報が、この世界から丸ごと消えてしまうことになる。
人類の歴史から、ある時期の記録が丸ごと消えるというのは大きなことだ。それに、当時のホームページがストック型だったことも大きい。様々な分野について、膨大な情報を集積しているホームページが少なからずあるのだ。そうした中には、書籍になっていない情報もある。20年前がサービスの最盛期であることを考えれば、書き手が既に故人となっており、移転先を探さないケースも多いはずだ。
インターネット上のサービスが終了するたびに、こうした情報の喪失が起きる。Web上の情報のアーカイブサービスもあるが、全てが完全に保存されているとは言いがたい。無料サービスを使わずに、有料で運営していれば大丈夫なわけでもない。企業は倒産するし、人間は死ぬ。失効したドメインが売買されている現状が、そうしたことを物語っている。
インターネット上の「hbol.jp」のようなドメインは、定期的にお金を払わないと使用権を失う。データの保存場所も有料だ。インターネット上で人々が活発に情報発信をするようになって20年から30年が経過した。これから続々と過去の情報の喪失が始まるだろう。
願わくば、そうした情報が、どこかに保存されて欲しい。そして簡単にアクセスできるようになって欲しい。こうした出来事のたびに、そう考えてしまう。
<文/柳井政和>
やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『
裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『
レトロゲームファクトリー』。