八幡浜市「使用済み核燃料貯蔵施設」PA講演会で、賛成派研究者は何を語ったか

一貫してオーソドックスな原子力推進主張

【2)原子燃料サイクルと使用済燃料の乾式貯蔵の役割(資料面数16/64面)】  核燃料サイクル概念図の新しいものと、電事連の広報資料、電事連による耐久性試験広報アニメのダイジェスト上映と解説がその前半であった。
核燃料サイクル概念図

核燃料サイクル概念図 2015 原子力・エネルギー図面集より。講演中で奈良林氏が用いた図面に比較的近いもので、PA活動では最もよく使われている図面である。FBRとATRの姿は完全になくなり、サイクルの中心にMOX工場があり、サイクルの外側に中間貯蔵施設が突き出していることに注目、実際にはSFと再処理の需給バランスが大きく崩れており、中間貯蔵施設は必須となっている

 講演中にダイジェストが上映された電事連の広報アニメ四本を紹介する。(1970年代からの原子力PA映画の手法を完全に踏襲しており、全く変化がない) “使用済燃料の貯蔵方法(湿式と乾式) – YouTube” “使用済燃料の貯蔵能力拡大とその具体例 – YouTube” “キャスクの安全確保と運用 – YouTube” “使用済燃料貯蔵対策の取り組み | 電気事業連合会”  乾式キャスクの性能、機能については、奈良林氏の講演は、電事連の広報に基づいているので、次のHPを見ると良い。 “対策の強化と貯蔵方法 - 使用済燃料の貯蔵対策 | 電気事業連合会” “実績と研究開発 - 使用済燃料の貯蔵対策 | 電気事業連合会
奈良林氏講演資料 19~22面

奈良林氏講演資料 19~22面。乾式キャスクの原理と堅牢性を説明したうえで、伊方発電所の計画に関する説明へとつなげている

 伊方発電所への乾式貯蔵キャスク貯蔵所設置については、四国電力の広報資料に基づいた講演となっている。 “使用済燃料対策|四国電力”  伊方発電所において乾式キャスク貯蔵所は標高24mの場所に設置され、津波の影響を受けない。また、火災対策として、周辺の山林はすべて切り払い、コンクリートで固め防火帯とする。敷地外への放射線の影響は50uGy/y以下と設計する。  キャスクは二重構造の頑丈なものであり、Sクラス以上の耐震性で製造され、架台、建屋ともSクラス以上となる。遮蔽体はCクラスの規制だが、Sクラスで建設される。  図絵28~30面を見れば分かるように、使用済み核燃料の崩壊熱は、取り出し後急速に減衰し、両対数表示では一般の人にはわかりにくいだろうが、両実数表示すると10年経てばほとんど無くなっていることが分かる。(Log-Logプロット:両対数表示”図面28”は、両軸の物理量変化が極めておおきいときに使われるものである。具体的には使用済み核燃料の放射能と熱量の経時変化を示す際には必須である。これをSemi-Logプロット:片対数表示”図面29”にする場合は例えば時間の切り取りが目的である。図面30のような両実数表示はグラフ化の意味が無く、錯誤行為または悪質な欺し図として理工学ではやってはいけないことと厳しく教育されるのが普通である。)
奈良林氏講演資料 27~30面

奈良林氏講演資料 27~30面。SFの崩壊熱の減衰をグラフで示している。28面でSFは、千年単位万年単位で熱≒放射能を持ち続ける事を示し、29面では最初の10年間で急速に減衰するが、その後はゆっくり減衰することを示す。SF長期保管とドライキャスクの意義を示す図である。30面のグラフは工学・理学の見地から全く無意味であって、このようなグラフを使っての説明は極めて不適切である

 この節の論旨は、伊方発電所における乾式貯蔵施設設置は、万全な安全を保証されていると言うものである。
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「地球規模」で語られた脱原子力のリスク
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