【0)講演冒頭】
冒頭、ご自身の職歴、研究業績について世界を股にかけたご活躍をかなりの時間をとって述べられました。また、御用学者との非難がなされ、マスコミでも「朝生」で発言を遮られるなどのメディア偏向を批判されていました。
さらに、日本の原子力労働者の被曝量が世界でもっとも多いことを批判し、氏が安全解析とくに予兆検知を専門とすることから、日本が従前通り行っている徹底した分解点検を取りやめ、予兆検知システムの活用などにより大幅な省力化と低被曝化を進めるべきと提唱されました。(日本での原子力労働者の被曝量が世界で最も高い事は長年の事実で、これは定検周期が未だに13ヶ月周期であることが主因である。諸外国は24ヶ月周期に移行しており、これだけで定検回数=被曝量が半減する)
その次に原電東海研修旅行の参加者に挙手を求めていましたが、「市民代表者」(あらかじめ選ばれた市民)の大部分が挙手していました。これは市民の関心の高さを示す一方で原子力PAとして双方の事業が一体として運営されており、
従前の原子力PAの手法を相変わらず踏襲していることがよく分かります。
シリーズ第1回で示したように、
総額にして約330万円の補正予算が一連のPA事業に一般財源から支出されています。
以後、講演要約です。先述したように、括弧内は
前回同様、筆者による補足説明となります。
【1)再生エネの限界と原子力発電の必要性(資料面数14/64面)】
日独は、再生エネ敗戦国という論を中心に、太陽光の電源としての質の低さ、ゼロエミッション安定エネルギーとして原子力を組み込んだうえでのフランスの炭酸ガス排出国としての優秀性・日独の劣位性を強く前面に押し出すとともに、我が国における再生エネ買い取り費用の激増を厳しく糾弾している。
(日本における
太陽光の金融商品化問題は極めて深刻であるが、これは先行するドイツ、国内での風発バブル破綻の教訓を完全に無視した経産省による
欠陥制度設計が原因である。まさに官製バブルの付けを市民に押しつけている状況である。制度は菅・野田内閣で作られ、安倍内閣がほとんどの期間実行している。これは
官製エネルギー大災害といえる)
なお、優秀なゼロエミッション安定エネルギーとして水力と原子力を挙げ、変動再生エネルギーとして太陽光と風力を挙げているが、講演を通して風力への言及はほとんど無かった。(
原子力をゼロエミッションとする考えは、すでにこの25年で廃れている)
日本は、世界第二位の太陽光パネル大国であるが、一週間の蓄電による電源としての完全な安定化には蓄電池に600~1000兆円を有すると厳しく批判している。(再生可能エネルギーの普及に伴い、系統安定化のための鉛蓄電池などを用いた大規模蓄電制御の実験、実用化が日本を含め全世界で進められているが、奈良林氏が主張するような
太陽光の完全安定化のための極超大規模蓄電設備の構想は存在しない)
炭酸ガス増加による地球温暖化の危機を徹底して強調しており、そのために石炭火力の使用を厳しく批判している。また、電力の質と価格という点から太陽光を厳しく批判している。さらに、石油については当然のこととして論外扱いしている。(一方で、再生可能エネ革命の主力である風力、新・化石資源革命の主役である天然ガス火力、日本が世界に誇る
石炭ガス化複合発電=IGCCについては言及していない)
奈良林氏講演資料 3~6面。この資料では、発電容量ベースでの太陽光発電の増加を示し、炭酸ガス排出ランキングとの対比によって、太陽光発電の普及と炭酸ガス低減が無関係であると主張している。特に独日を再生可能エネ敗戦国と酷評している
奈良林氏講演資料 7~10面。日本の電源構成と電源供給比の推移と電力供給に限る炭酸ガス排出量の推移を対比し、2011年以降、炭酸ガス排出が増えていると批判している。また再生可能エネ賦課金激増の問題を厳しく批判している
ドイツは石炭火力大国であると厳しく批判している。(正確には褐炭による山元発電が非常に多く、残余の原子力とそれに倍ちかくある褐炭発電でドイツはベースロード発電している。褐炭発電は極めて安いが、炭酸ガス排出が極めて多く大規模な露天掘りで自然破壊も著しい)
近年日本では、火発が発電量の85%を占めるようになり、石炭火力も増加しつつある。炭酸ガス排出を増やす愚行であると批判している。
奈良林氏講演資料 11~14面。ドイツの石炭依存について批判している
この節の論旨は、炭酸ガス増加による地球温暖化と電力の質と量、価格という点で、原子力と水力の他に選択肢はなく、水力は資源量が枯渇しているために原子力しか選択肢がないというものである。