鉄道3社が協力。観光列車はJR北海道再建の切り札になるか

 去る2月12日、JR北海道にまつわるビッグニュースが飛び込んできた。JR北海道とJR東日本、東急電鉄などが協力して観光列車を走らせるというものだ。

観光列車戦国時代に独自性を発揮できるか

ROYAL EXPRESS

伊豆急行2100 系「アルファリゾート 21」改造車を使用する東急電鉄とタッグを組んだROYAL EXPRESS(プレスリリースより

風っこそうや

キハ 48 形車両改造車の「びゅうコースター風っこ」を使用するJR東日本とのタッグ、「風っこ そうや」(プレスリリースより)

 先述の3社とJR貨物が発表したプレスリリースによると、JR東日本が観光列車「びゅうコースター風っこ」をJR北海道に貸し出して、今年の夏に宗谷本線で運行。さらに、東急電鉄が伊豆半島で運行している観光列車「THE ROYAL EXPRESS」を2020年夏に道東エリアを中心に走らせるという。  前者はJR北海道が販売から運営、運行までを行い、後者は東急電鉄が販売や車内サービスなどを提供してJR北海道が運行面で協力、いずれもJR貨物が北海道までの車両輸送に協力するという仕組みになっている。  このニュース、経営難に喘ぐJR北海道にとっては久々の“前向き”な話題。もとより北海道は国内有数の観光地であり、四季を問わず日本内外から多くの観光客が訪れる。そうしたところで流行りの観光列車が走るのだから、期待するのも当然だ。  ところが、「遅すぎる」という厳しい指摘をする専門家もいる。鉄道ライターのM氏は、「5年、いや10年は遅かった。経営面への好影響は限定的でしょう」と話す。 「今回の観光列車の取り組みは、以前国交省がJR北海道の経営再建に関して、観光列車の運行もしなさいと指摘をしていたことを受けたもの。JR北海道はほとんどノウハウを持っていないし、コストの負担も厳しいので、他社の力を借りることになった。事実上、車両を貸し出すだけのJR東日本はともかく、東急電鉄はもともと『THE ROYAL EXPRESS』も自社線ではなくJR東日本と伊豆急行という他社の線路上を走らせていたわけで、北海道までの車両輸送をクリアできれば今回の企画は魅力的でしょう。ただ、JR北海道について言えば、他社の力を借りなければこうした列車の運行ができないという段階になる前にやらなければ意味がなかった」  たしかに、こと“観光列車”として考えればJR北海道は後進と言わざるを得ない。多くの観光列車が走ることで知られるJR九州では、その看板たる「ななつ星 in 九州」を‘13年秋から走らせている。さらに車内で食事を楽しむ観光列車というスタイルの嚆矢ともされる肥薩おれんじ鉄道の「おれんじ食堂」も同年3月から運行していて、いずれも5年以上たった今でも人気の高い観光列車だ。  さらに、JR各社はもとより、地方の中小私鉄や第三セクター路線も精力的に観光列車を走らせており、車内での食事や作り込まれた車両デザインなどが注目されることも多い。こうした動きは大手私鉄にも広がっており、先述の東急電鉄「THE ROYAL EXPRESS」や西武鉄道の「旅するレストラン 52席の至福」、東武鉄道の「SL大樹」、加えて今春からは西日本鉄道が「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の運行を開始する。時代は観光列車百花繚乱、競争も激しい戦国時代なのである。 「先行する観光列車のなかでも人気が高い列車を見ると、車窓や車両デザイン、食事、乗務員の接客などすべてにおいて高いクオリティを持っている。さらに、沿線地域の人たちが自主的に乗客の出迎えを行うなどの動きもあって、こうした点も観光列車の魅力のひとつになっています。そんななかで、JR北海道でも“観光列車を走らせた”という実績作りだけでは意味がないし、端から勝負にならないでしょう。だから他社の力を借りるのでしょうが、それは逆に“自社では何もできません”と宣言しているのに等しい」  かなり手厳しい意見だが、大ブームになっているからこそ、自社性や独自性が問われているということなのだろう。
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鉄道各社の参入が起爆剤に
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