5)日本における乾式貯蔵の実際と問題点
現在日本では、福島第一と原電東海で乾式キャスク貯蔵の実施実験を行っており、
実用化していない。(合衆国では、1986年から商用利用が始まっている)
日本の乾式貯蔵キャスク=金属キャスクは、
設計貯蔵期間50年であり、加速試験で実証した寿命も
60年までである。(合衆国では80年を想定している。)
日本の金属キャスクは、中性子遮へい材としてエポキシ樹脂を使っており、それ自体が
消耗品であって、
50年後、60年後以降の性能は保証されていない。(エポキシ樹脂は、優れた中性子遮へい材だが、中性子照射によってエポキシ樹脂は減損してゆく)
50年後にHLW最終処分場がない場合、遮蔽性能を失った(減損した)金属キャスクからSFをどうするのか
全く見込みがない。
日本の金属キャスクがもし
火砕流等に飲み込まれた場合、SFを保護する能力が維持されるかは分からない。キャスク、核燃料共々破壊される可能性はある。また、キャスク内のエポキシ樹脂は高温には耐えられず、燃えてしまうか著しく劣化する。(例えば姶良・加久藤カルデラ破局噴火の場合、川内発電所は数十メートルの火砕流に飲み込まれる。阿蘇カルデラ破局噴火の場合、伊方、玄海、川内発電所は火砕流に飲み込まれる可能性がある)
SFの放射能が減衰する速度は遅く、
1/10になるのに100年、
1/400になるのに1000年かかる。これに対して
金属キャスクの寿命は40~60年程度と極めて短い。
制度も穴だらけであり、
設計貯蔵期間を超える場合の措置が規定されていない。仮に操業停止命令を出してもその後どうするか
規定がない。50年を超える期間の
SFに関するデータが無い。
火山噴火の影響が規定されていない。
電力会社が経営体として消滅した場合の規定がない。
そもそも、乾式貯蔵キャスクの形式認可に使われた
データに矛盾があり、
遮蔽性能の維持に疑問がある。
日本では、乾式貯蔵キャスクの価格が
1基2.4億円と高く(合衆国では3000万円程度)が、建屋建設費、操業費は低い。結果として、
地元への経済効果は無い。(電中研のモデル試算では、5000t級の乾式貯蔵キャスク貯蔵所の場合、キャスク費1195億円、建設費105億円、解体・処分費10億円、操業費238億円、輸送費60億円が54年間の費用となる)
6)日本におけるバックエンド、デコミッションの現実と将来
日本において発電炉の解体実績はJPDR(12.5MWe)しかない。これは、伊方1の1/50の規模しかない。JPDRでも放射性解体瓦礫は所内保管となっている。
日本では、放射性解体瓦礫の最終処分場について全く目処が立っておらず、放射線管理区画の解体に着手することは
不可能と言って良い。
現在、国と電力は、放射性解体瓦礫の行く先がないのに原子炉の解体に着手しており、
すぐに行き詰まることは自明である。
解体廃炉は
被曝労働とセットであり、解体瓦礫の行き先がなく行き詰まることは必至であって
「何のために解体・撤去」するのか原点に立ち返る事が必要である。
長沢は、
「長期密閉管理」(管理廃止・世代間廃止)しかないと考える。故に、1)に立ち返り、
伊方発電所における使用済み核燃料乾式貯蔵施設の建設は必要ないと結論する。
7)海外事例紹介
旧東独グライフスヴァルト発電所(VVER-440/230)の事例を紹介。
8)地震・火山国日本の特異性
経産省は、HLW最終処分場選定にあたって「科学的特性マップ」を2017年7月28日に提示したが、すでに「科学的有望地」から「将来的に段階的な調査の対象になる可能性がある地域」へとわずか1年半でおおきく後退させて全国でPA活動をしている。
「科学的有望地」だけで国土の6割を占め、その中の望ましい地域で国土の3割を占めており、
科学的検討をした結果とは考えがたい。
日本列島は、プレートの沈み込みのうえに存在し地下水の深地層への浸入も多いためにマグマが発生しやすく、全土に火山が存在する。(ただし、四国だけは第四紀火山が存在しない。フィリピン海プレートの沈み込みの条件から、火山フロントは、中国山地山陰地方側である)
火山の影響と地震、地層の安定性から、
国内にHLW最終処分好適地は存在しない。(火山の影響や地下に存在する油層、炭層、ガス層、塩水層に着目すると、可能性が見込まれるのは唯一四国のみである)