反対派に伝えたい、民泊の意義。私利私欲をはるかに越えたもの~金欠フリーライター、民泊をはじめる(9)
前回から、世田谷区で民泊を続けているタエコとユイ(敬称略)の母娘にご登場いただいているわけだが、天下の悪法「民泊新法」が施行されるにあたり、一家にどのような影響があり、どのように動いたか、タエコの独白をそのまま再現したい。
「おととしの11月でしたかね、『民泊新法』が可決されると聞いて、これからは正々堂々と民泊ができるようになるんだ、と喜びしかありませんでした。ところが中身を聞いてみると異様に厳しいものだということがわかってきて、しかも世田谷区ではさらに上乗せ規制までされると。これではいけないと思い、ホスト仲間で集まって対策を練るようになりました。
保健所の対応は悪かったですね。『違法民泊』に対する苦情が入っていて、まともな民泊との区別がついていなかったようで、民泊と名がつけば何でもダメみたいな態度でしたね。
区議会議員にも陳情に行き、『私たちがやっている民泊は全然違う。悪いところは何一つない』と訴え続けました。
国は180日に規制するという。そこに世田谷区はさらに「120日」とか言っていたわけです。国は動かせないかもしれないけど、世田谷の「120」だけは冗談じゃない、そこを崩していこうというのが私たちの目標になりました。
区は民泊の受付を3月15日から始めるとのことで、粛々と準備を進めていたのですが、そこでひっかかったのが消防法ですよね。
消防署に問い合わせると、『旅館業法に準ずる防災設備が必要だ』というわけですよ。たった120日しかお客さんを泊められないのに、そんな設備投資はできませんし、元々人が住んでいる場所ですから問題ないじゃないですか。
ここで私たちが声を大にして言いたいのは、『在宅ホストに悪徳ホストとか違法民泊はない』ということなんですよ。絶対に問題なんか起きるわけがないのですから。
ごみの問題とか、騒音の問題とか、在宅ホストの家では一件も起きていないわけですよ。もちろん、火事も殺人もあるわけがない。とにかく、まずは在宅型ホストと業者がやっている不在型ホストの区別をつけてもらいたいですよね。
何度でも言いますけどね、在宅型民泊というのはいいことしかないんですよ。うちの近くに、昭和チックなケーキ屋さんがありましてね。ほかにもカレーとかトーストとか食べられるわけですけど、そこの店をゲストの方々に紹介していたら感謝されましてね。
近所のタクシー会社もそうですよ。四人家族とかだと小型タクシーには乗れないですよね。それでアルファードのタクシーを私たちが予約してあげるようになったのですが、あまりに予約数が多いからということでお歳暮とかお中元をもらうようになりましたよ。
日本と中国の間、国と国の間には色々な問題がありますよね。でも、うちに泊まった人は絶対に『日本人はいい人だ』と思ってくれる。そんな若い子たちが将来色々な世界で上にいったときに、どれほどの国益になることか」
昔、「被爆者二世」を売りにした「偽ベートーヴェン」がいた。実を言うと、祖父がヒロシマで被爆した筆者は正真正銘の「被爆者三世」である。自分自身が被爆したわけでもあるまいし、「偽ベートーヴェン」を見るまでそれを売りにするという発想すらなかった。
ただ、これだけは言える。もしハリー・トルーマンが若い頃に日本を旅行して、在宅型ホストの民泊に泊まっていたなら、絶対に原爆など落とさなかっただろう、と――。
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