“普通のおばちゃん”が24時間・年中無休で運営する、子どもと親のための「駆け込み寺」

24時間・年中無休で、面倒な手続きなしに受け入れる

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自宅と支援の場は分けない。生活をともにして支援するから“日常生活支援”サポートハウスという

 行政による家族支援も増えてきてはいるが、緊急で支援が必要な家族にとって最適なものとは言い難い。24時間対応の電話相談はあっても、行ったらすぐ受け入れて面倒を見てくれるような施設はない。急に子どもを預けたいと思っても、煩雑な手続きや事前登録が必要だったり、平日の日中しか利用できないなどの制約があったりして諦めてしまう。 「役所のやることには限界がある。でも家族の困りごとには、盆も正月もない。厄介なことは夜中に起こるしね。それに本当に困っている人は、一人で役所に行っていろいろ書いて手続き……なんてできないよ」と山本さんは言う。  だからサポハは、24時間・年中無休で、面倒な手続きなしですぐ受け入れる。わずかな費用で、日常生活そのものに寄り添い、その人にあった支援を探る。自宅を開放しているからこそ、それが可能になる。  山本さんはこの理想を実現するために、絶えず携帯電話を手放さず、金沢から離れることもほとんどない。あっちで子どもが問題を起こしたら駆けつけ、こっちで困った親がいたら話を聞く。貧乏暮らしは当然で、それでも少ないお金をやりくりして、毎日美味しい食事を用意する。 「まずは食べること。食べることから始めるんや。話はそれからよ」  それが彼女の口癖だ。  現在もサポハは継続中だ。知的障害のある息子は、成人した今も山本さんに苦労をかけ続けているし、サポハに入所している子どもたちも一筋縄ではいかない難しい課題を抱え、日々頭痛の種を提供する。  新しい相談者は絶えないし、他の支援者が手に負えなくなったケースが持ち込まれることもある。次から次へとしんどいことは現れる。本来であれば行政が行うべきである支援。その不備を、市井の人々が私生活を犠牲にしてまで担って初めて「育児」が成り立っている。日本はそういうギリギリの瀬戸際にいるのである……。  しかし山本さんはそのすべてを、持ち前の明るさでしなやかに受け止め、力強く言う。 「私の命が続く限り、サポハは続けていくよ」 ◆あなたの知らない「子育ての話」 第1回 <取材・文/林真未> はやしまみ●公立小学校教員、日本人初のファミリーライフエデュケーター。子ども家庭支援センター、子育てひろば、小規模保育園等を運営する「特定非営利活動法人手をつなご」の理事を務める。著書に『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
はやしまみ●公立小学校教員、日本人初のファミリーライフエデュケーター。子ども家庭支援センター、子育てひろば、小規模保育園等を運営する「特定非営利活動法人手をつなご」の理事を務める。著書に『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
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