一連の口裏合わせは筆者への警戒が強まるまでは周知徹底されておらず、各所で綻びも見せていた。
UNITE結成を数日後に控えた2016年1月15日と16日の両日、教団の関連組織が入る新宿の成約ビルで『大学生遊説隊研修会』が開かれた。入手した同研修会のプログラムには講師として勝共連合の太田洪量会長の名が記されている。
UNITE結成の数日前に行われた大学生遊説隊研修会のスケジュール表
しかし同年6月9日、太田会長は『全国の「国際勝共連合 大学生遊説隊 UNITE」の皆さんに』として以下のメッセージを寄せている。
「全国のUNITEの皆さん、若い皆さんが日本、アジア、そして世界のために起ち上がったことを聞いて、心よりの感動と共に嬉しく感じたのは、私一人ではないと思います」
UNITE結成前に遊説隊メンバーへ研修を行っていた太田会長が「UNITEの皆さん、若い皆さんが」「起ち上がったことを聞いて」とはおかしな話だ。
UNITE公式サイトに掲載された太田洪量勝共連合会長のメッセージA
UNITE代表学生を直撃、政権の意向については「わからない」
これらの証拠を掴んだ筆者は、UNITEの代表学生に直当て取材をする機会をうかがった。筆者を避け続けてきたUNITEの小村聡士代表だ。そしてついに2016年12月4日、『6大都市一斉デモ行進』の現場の一つである渋谷で小村代表のインタビュー取材に成功、政権の関与について言質を取った。
同日午後、宮下公園にはデモに参加するUNITEメンバーの教団2世たちが集結。教団本部の青年学生局のスタッフや東京地区の青年信者を統括する地区教会幹部の顔も見える。動員された2世信者は約160名。
隊列の先頭でデモ演説の練習をする小村代表を捉まえ、直撃した。小村代表は「2つの看板」については「意味が分からない」と言葉を濁したものの、UNITEが本当に東大生4人で結成した自主独立組織なのかとの問いには「間違いない」と断言した。
デモ開始前、筆者の直撃取材に答えるUNITEの小村代表(2016.12.4)
宮下公園を出発し、警備の警察官の誘導で渋谷の街中をデモ行進するUNITE。
渋谷で行われたUNITEのデモ(2016.12.4)
デモ終了地点である神宮通り公園に到着後、参加メンバーには「
OBからの差し入れ」としてエクレアが配られた。ここにも「
結成初年にもかかわらず、何故OBがいるのか」という設定の甘さが露見していた。
デモ終了後、記念撮影をするUNITE(2016.12.4)
立ち去ろうとする小村代表を呼び止めUNITEの結成や活動に自民党安倍政権の意向は働いていないのかと尋ねた。
すると「
それは……どうですかね。分からないですね」と答えるではないか。自分たちが結成したはずなのに「分からない」と答えるUNITEの代表学生。
政権の意向が働いていないのであれば否定すればいいだけの話だ。キッパリと否定せず曖昧に言葉を濁してしまったことで、却って政権の意向の存在を際立たせることとなった。
デモ終了後、筆者の直撃取材に答えるUNITEの小村代表(2016.12.4)