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都会的で洗練された玉流とヘマジ館と比べローカル感あふれるパタヤ木蘭のレシート(右)
2017年秋、国連制裁強化の足音が忍びよる暗々たる空気だったバンコクの北朝鮮レストラン(以下、北レス)についてお伝えしたとき(参照:
”閉店続く「北レス」。まだ3店舗残るタイ・バンコクの北レスに行ってみたが……”–HBOL)から北朝鮮をめぐる情勢は一転、今月末には2度目の米朝首脳会談がベトナムで開催されることが正式発表された。
そんな中、昨年も飽きもせず6月から8月、9月、12月とタイの北レスへ通い続けた著者が満を持して注目の2店の現状をお伝えしたい。
まずは、パタヤにある北レス
「木蘭レストラン」だ。タイ最大の歓楽街パタヤにはあるが、ほとんど知られていない。なぜなら、賑やかなビーチサイドから東へ約15kmも離れているからだ。タクシーはメーターを使わないので、レンタルバイクが便利だ。
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2階にあり見つけづらいパタヤ木蘭レストランの入り口
木蘭は、マープラチャン湖近くあり、周辺は工業地帯で、韓国企業も多く、韓国企業の駐在員や出張者をターゲットにしている。近くにはゴルフ場もあるのため土日は、プレーの後に北レスでおつかれさん会に利用されるようだ。
木蘭は、「マグノリアスパタヤホテル」の敷地内にあるため、「
ブッキングドットコム」を見てもきちんと紹介されている。ホテルの敷地内とはいえ、木蓮自体はプレハブのような簡素な建物の2階にある。
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ホテル施設として北レスが紹介されている(ブッキングドットコムより)
ホテルのすぐ目の前はマープラチャン湖のため静かだが夜間は真っ暗でタクシーもほとんど通らない。ここが郊外とは言えパタヤとは思えないくらいローカル北レスいや北食堂という感じがする。
長方形の店内は20席ほどあるテーブルフロアと奥にステージスペース、さらにその奥には7、8人ほどがカラオケも楽しめる個室が完備されている。
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長方形のプレハブのような木蘭レストラン店内
客数が集まれば、午後7時半ごろから恒例のステージショーもあるがローカル感があってまったりしている。
著者が昨年、2度行ったうちの1回はステージショーなしの悲惨な日だったが、暇なのか、北朝鮮女性スタッフが話し相手をしてくれる。3人ほどのスタッフの中には、なぜか日本語が話せるスタッフがいたり、30代前半くらいで凛とした顔立ちの美人リーダーは、以前、3年間、中国瀋陽の北レスにいたらしく中国東北弁がペラペラだったりと、変なところで盛り上がったので退屈はしなかった。
スタッフによると、木蘭はこの場所で2009年から営業しているそうだが、北マニアにも知られていない。まさに秘境北レスの名がふさわしい。
さて、食事を終えて帰ろうとするもタクシーがつかまらない。さすがにグラブでも郊外過ぎてマッチングできない。
すると、ホテルの敷地内でヤンキー座りをしている2人の男性と目が会う。朝鮮語っぽい言葉を話していたので、「どこの人ですか?」と英語で尋ねると、「コリアン」と返事が。そこで、朝鮮語で、「(北)朝鮮の人ですか?」と聞いたら、数秒の沈黙のあと男性は、「はい」と認めた。
タクシーがなくて帰れないと伝えると、「俺が送ってあげるよ、400バーツ(約1400円)で」。
木蘭へ来るときのタクシーでも言い値で300バーツ(約1050円)だったので、完全に足元を見られているが、他の手段がないので、お願いすることに。
しばらくすると、やってきたのは黒いトヨタのミニバン。どうやらこのミニバンで普段スタッフを送迎しているようだ。
助手席に乗ると、ホテルの場所を伝えて発進。金と名乗る20代半ばくらいの若い男性は、タイへやってきて1年という。北レススタッフの監視役兼世話役のような役割のようだ。
「タイは住みやすいか?」と尋ねると、「とても快適」とのこと。彼は英語が達者で思った以上に饒舌だ。帰国はしないが、たまにカンボジアとかベトナムへ出張すると金氏は話す。パタヤでは、日本人が経営する旅行会社とも交流があるとかで、彼のスマートフォンで写真を見せてくれた。
金氏が車内で饒舌だったのは、おそらく、盗聴器がついていないからだろう。彼は、いつか東京へも行ってみたいとも話していた。