兵士のために行動した司祭の命日だったバレンタインデー
前線で戦う兵士たち。2016年9月、モスル近郊で
バレンタインデーといえばチョコレート。楽しそうなイメージとは裏腹に、2月14日は聖バレンタインが処刑されたという「命日」である。ローマ帝国皇帝・クラウディウス2世は、愛する人を故郷に残した兵士がいると士気が下がるという理由で、兵士たちの婚姻を禁止した。
キリスト教の司祭だったバレンタインは兵士たちを憐れみ、彼らのために内緒で結婚式を行っていたが、見つかって処刑されたのだった。
この話はとても興味深かった。2006年イラクでは、愛を忘れた兵士たちが士気をあげまくり、内戦へと突入していった。危険だからと、ジャーナリストも現地で取材をしなくなってしまい、日本人の関心は薄れていく一方だった。
イラクの子どものため、バレンタインデーの「チョコ募金」!?
JIM-NETで行っているチョコ募金のパッケージ
私は、鎌田實医師と一緒に
JIM-NETというNGOを立ち上げて、イラクのがんの子どもたちの医療支援を行っていた。戦地となったイラクは、医療不足が深刻なのだ。当初は寄付金が集まっていたものの、関心が薄れていくにつれどんどん集まらなくなっていった。
そこで考えたのが、バレンタインデーのチョコ募金だった。アメリカの軍事作戦に対抗して、「限りなき義理の愛」作戦と命名したキャンペーンは、500円の募金のお礼に義理チョコを差し上げるというものだ。
単なる募金とは違い、パッケージにはイラクのがんの子どもたちが描いた絵を使った。とんでもない状況にいる子どもたちなのに、弾むような絵を描いてくれた。初めは数百個くらい必要かなと思っていた。ところが「こんな義理チョコは素晴らしい」と好評で、気がついたら5000個の注文があったのだ。
チョコ募金はそれだけで終わらなかった。毎年その数が増えていき、16万個まで数が増えたのだ。北海道の製菓メーカー「六花亭」が、原価でチョコを作ってくれる。8000万円の募金が集まり、自立した活動ができた。
しかし昨年は、原材料の値が上がったので仕方なく550円とした。思うように個数も伸びず15万個にとどまってしまった。バレンタインの市場が縮小していることも響いた。
今年のテーマは「戦場のたんぽぽ」。病院に入院している子どもたちに、花の絵を描いてもらった。