「名探偵コナンもびっくり!」な今回の事件の発端は、8月21日(現地時間8月20日)に米国で誰もが知る人気司会者・コメディアンの「コナン・オブライエン氏」(Conan O’Brien氏)(以下、オブライエン氏)が自身の番組内で「名探偵コナン」と「コナンタウン(=北栄町)」を紹介したことに始まる。
名探偵コナンの原作漫画連載開始1年前(1993年)から活動を開始していたオブライエン氏は、日本でのコナン人気に嫉妬し、「頭脳明晰でスーツを着ている姿がそっくりだ」などとしてコナンタウンに対し「賠償金3兆円」(日本円)を請求。その後もSNS(Twitter・Facebook)などを通じて「クリーニング店に『AMERICAN CONAN’S FLUFF’N FOLD』とオブライエン氏の名前を冠すこと」「コナンタウンへの鍵」「コナンタウンに設置された名探偵コナン像の髪型をオブライエン氏と同じ髪型に変更すること」を要求した。
突如として賠償金を請求されたコナンタウン(北栄町)の動きは早かった。
北栄町はFacebook上で「ラシュモア山のリンカーン大統領の横に松本昭夫北栄町長の顔を作ること」「ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに松本昭夫北栄町長(MAYOR MATSUMOTO)の星を作ること」「北栄町の全人口に相当する15,000個のハンバーガー」を要求し、偽物の3兆円小切手を準備するなど、応戦に出たのだ。
その後も壮絶な「対決の応酬」は続き、司会者「コナン・オブライエン」と鳥取県の小さな街「北栄町」が繰り広げる複雑な心理戦や駆け引きは日に日に激化し続けた。日米間で生じた事件の平和的解決は「喫緊の課題」となり、駐日アメリカ大使のビル・ハガティ氏までもが動いた。同氏が8月31日に調停役を申し出、9月4日には米国農務省とともに米国産牛肉の提供を示唆するツイートも行うまでに至ったのだ。
そして、ついに渦中のコナン・オブライエン氏が9月6日に「緊急来日」し、北栄町に直接乗り込むことが決まったのだ。
配られたのは鳥取和牛でもアメリカン・ビーフでもなく、まさかの!?
一方の「喧嘩をふっかけられた」北栄町はというと……「コナンの来日」に沸き立っていた。
コナン・オブライエン氏が来町する9月6日13時30分からは、「コナン駅」の愛称が付けられたJR由良駅前の広場で「米国の象徴的食べ物」であるハンバーガー1,000個が振る舞われることが決定。天候に恵まれなかったこともあり、準備作業を早くから進めていたイベントスタッフやハンバーガースタッフからはどれだけの参加者が集まるのかと先行きを危惧する声も聞かれたが、その心配は杞憂に終わった。
地元在住の子供連れや学生らに加えて、時おり思い出したように毎時1~2本ほどやってくる短い列車から下車した地元客、騒ぎを聞きつけた観光客らもその輪に加わって駅前広場に長蛇の列が生まれ、当初の予定時刻の15分前となる13時15分頃から「米国を食らう」べくハンバーガーの調理・配布が開始された。
「頭脳明晰でスーツ姿なところがそっくりだ」と評されたコナン像の前にはハンバーガーを求める町民の長蛇の列が生まれた
しかし、このハンバーガーにはある秘密があった。
実はこのハンバーガー、鳥取和牛でもアメリカン・ビーフでなく「豪州産」牛肉使用のオージービーフバーガーなのである。
調理スタッフの着ている服には「オージー・ビーフで元気!」の文字、オージー・ビーフ大使・牛肉大使を称するカントリーファッションのおじさん(アンドリュー・コックスMLA豪州食肉家畜生産者事業団駐日代表)やスタッフにより、熱烈なオージービーフアピールが行われた。
どうやら、後日確認したところ、何故かオージー・ビーフ生産者団体による「オージー・ビーフ祭り」の一環として、ハンバーガー1,000個の配布が行われたようである。
オージー・ビーフ大使・牛肉大使を称するカントリーファッションのおじさん。実はアンドリュー・コックスMLA豪州食肉家畜生産者事業団駐日代表