平成とともに「消える泉」と「生きる泉」――明暗を分けた2つの「梅田名物」

消滅の噂があったもう1つの「梅田の泉」は移転で存続へ!

 さて、一方の「生き残ることになった泉」とは、阪神梅田駅の地下2階で長年親しまれてきた梅田ジュースコーナー「元祖大阪梅田ミックスジュース」だ。  元祖大阪梅田ミックスジュースは先述した「泉の広場」誕生の僅か数ヶ月前、1969年秋に日本初の駅ナカジューススタンドとして開店。「エキナカジュースバーの元祖」としても知られる。  同店は阪神梅田駅改札前という好立地に位置し、看板商品の「ミックスジュース」を1杯150円(2019年1月現在)という低価格で迅速に提供することが特徴。阪神ファンは試合観戦のついでに飲んだことがある人も多いであろう。  50年に亘って駅利用客に親しまれ、阪神梅田のシンボルの1つとなっていた同店だが、実は阪神百貨店梅田本店(大阪神ビル)の建て替えにあわせた阪神梅田駅の大規模改修工事により「閉店」が噂されていたのだ。
元祖大阪梅田ミックスジュース

レトロな店構えの「元祖大阪梅田ミックスジュース」。今年で50周年を迎えるという

 この元祖大阪梅田ミックスジュースを運営するサカイは1951年4月に坂井飲料として設立された。設立当初は西日本初となる「噴水型ジュース自動販売機」によるジュース販売を主力事業としていたが、大手飲料メーカーとの競争激化に伴って主力事業を阪神駅構内での飲食店運営へと転換。2019年1月現在は、阪神電鉄の3駅で「元祖大阪梅田ミックスジュース」「阪神そば」「カレーショップミンガス」などを多店舗展開している。  開店当初は大阪のご当地飲料コーナーに過ぎなかった「ミックスジュース」であったが、同店の成功を受けて設立された京阪電鉄子会社によるジュースバーコーナー「ジューサーバー」は大阪を飛び出し関西圏と首都圏各地のエキナカ・エキチカにも進出。さらにJR東日本子会社が運営する「ハニーズバー」など他の大手鉄道事業者各社も多角化戦略の一環としてジューススタンド事業に参入しており、全国各地で「電車のおとも」として定着している。
ジューススタンド

ジューススタンドのすぐ後ろ(写真左)には阪神電車の改札口が

 久々に阪神梅田駅の「元祖大阪梅田ミックスジュース」へと足を運んでみる。  平日にもかかわらず店の前には数人の列が出来ており人気のほどがうかがえるが、そこは流石「元祖大阪梅田ミックスジュース」。「早くて安い」ことが特徴の同店だけに、すぐに順番が回ってきた。この「客の多さ」と「回転の速さ」こそが、「いつでも新鮮」なジュースのカギなのであろう。
行列整理用のバー

多客時に備えたバーが並ぶ。多くの客に愛されていることが分かる。営業時間は7時から22時までと非常に長い

 この日、筆者が注文したのは看板メニューの「ミックスジュース」だ。店頭に漂うどこか懐かしい香りを堪能しつつも時代の最先端をゆく(?)交通系ICカードで150円を支払うと、すぐにジュースが手渡された。格安だけにカップは小さいものの、並々と注がれた姿に感激。こぼさないように恐る恐る口を近づければ、新鮮なフルーツの香りが口いっぱいに広がる。もちろん「フレッシュジュース」の定番である独特の氷のシャリシャリした触感も楽しめる。  なお、このミックスジュース、季節によって入っているフルーツの種類が違うそうで、その時々で少し違った味を味わうことができるのも特徴の1つだ。ミックスジュース以外のフルーツジュースも同様で、夏は西瓜、冬は苺など、季節ごとに期間限定メニューが発売されるため、こちらを目当てに来店する人も多いと思われる。
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「存続」の報はSNSでも大いに話題に
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