続いて、演説に登場するいくつかの箇所をもう少し細かく分析してみよう。
まず、「すべての親が、一定の期間子どもと過ごせば、一緒に居られる」というのは、トランプ大統領の「ゼロ・トレランス」=移民親子引き離し政策のこと。不法移民として摘発された親を子どもから隔離するという強硬策が大きな批判を浴び、大統領令で撤回することとなった。
また、フリントやボルティモアについて言及しているのは、ミシガン州フリント市で起きた水汚染公害、メリーランド州ボルティモアで移送中の黒人青年が死亡した事件、ニューヨーク・ブロンクスでギャングの抗争に巻き込まれた15歳が人違いで刺殺された事件、カリフォルニア州の山火事、アメリカの自治領・プエルトリコの財政破綻を指している。
いずれもここ数年、アメリカ社会を揺るがせている問題であり、人種、経済、格差、インフラや社会保障などさまざまな要素が入り混じっているため、簡単な解決策を示すことは難しい。
しかし、そういった出口の見えない状況であるからこそ、コルテスが繰り返す「justice(公正さ)」という言葉は大きな指針となり、道筋を照らす光となる。
多様化する社会において、考えなければならない課題は山積みだ。まずはすべての人間にとって「公正」であるかどうかを、反芻してみるのもいいかもしれない。
<取材・文・訳/林 泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン