「沖縄が分断されたままならいつまでも基地を押し付けられる」。ハンスト元山氏が語った思い

その時、宜野湾市長は下卑た笑いを浮かべた

 看過できないと言えば、1月7日の宜野湾市長・松川正則氏の言動で、忘れられない場面があった。  元山氏らとの面談が終わり、それから「県民投票に参加するな」という市民グループの驚愕の要請行動をも受け、そうして報道陣の囲み取材に応じた場面の、その最後の雑談的な放言を、わたしは忘れることができない。  記者クラブ所属の皆さんは絶対に書かないだろうから、わたしが書いておこう。 「沖縄市はどうなってる? 独りぼっちは嫌だからね」  ニヤニヤと意味不明の笑みを浮かべつつ、松川宜野湾市長が放ったこの言葉は、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という類であり、その軽薄さにわたしは愕然とした。  市民の投票の権利を奪うということの意味の重大性、罪深さを、まったく自覚していないことが明らかになった瞬間だった。  自民党本部をはじめとする「県民投票対策=妨害方法の研究」や「指令」に基づいた市議会議員の「反対意見書可決」や「県民投票関連予算否決」の流れがあるが、最終判断は、市長自身に委ねられている状況だ。  その流れの中で、同日に沖縄市長・桑江朝千夫氏も「意思表明」すると言われていた。松川市長は、その結果を知りたくて、報道陣に問いかけ、ついでに本音も漏らしたわけなのだ。  市長自身が良識を保っていれば、他の保守系市長のいる自治体と同様に、県民投票には間違いなく参加できる。例えば、与那国町議会では二度も県民投票関連予算案が否決されたが、外間守吉町長の判断で県民投票参加が決めているのだ。

「勇気ある行動に応えなかったら罪悪感しか残らない」)

 ハンストを決行した元山氏の話に戻ろう。  前回の原稿は、途中で区切りをつけて手放したものなので、じつは書き残したことがある。  1月16日の午前中、元山氏とウーマンラッシュアワー村本大輔氏との対話に「かぶりつき」の位置で耳を傾けたあと、さらに村本氏と立ち話の中で聴いた話だ。
村本氏

急遽沖縄に駆けつけたウーマンラッシュアワー村本大輔氏と元山氏

 元山氏に会うためだけに沖縄へすっ飛んできた村本大輔は、あらためてこう語った。 「この勇気ある行動を見せられて、これに応えなかったら、罪悪感しか残らないじゃないですか。メシも食わず、普天間基地のある宜野湾市のど真ん中に座り込んでいる姿を見せられて……。選挙で基地賛成、反対の候補のどっちに投票したかも言えない沖縄、という声を地元の人からもよく聞くんですよ。基地の話になるとケンカになるから言えない、と。その中で意思表明して、家族がこの町で生活している前提もありながら、座り込む覚悟が凄い。  もし原発の町(福井県おおい町)で育った自分が、原発要る要らないの議論になったとき、彼のように大きな声で意思表明できるのか、と思うと、自信がない。だから、今日は彼から勇気をもらいました。  いまの日本では、原発だけじゃなくて、大人になればなるほど、周りの空気を読んで自分の意見を言えなくなる風潮も強いです。だって、芸能人が自分の意見言っただけで、CM降ろすとかいう人も出てくるわけじゃないですか。彼だって、大学院休学してまで県民投票の活動をしてて、あいつはどこどこからカネもらってるんだとか、どこどこの回しもんだとか、噂を流すヤツもいるわけじゃないですか。そういうのがネットの中に残る時代です。それでも、彼は文句も言わず、自分を守るような発言もしない。今日は、ただ自分の思いを誠実に語る彼の姿を見ました。そして、こういう人に会えてよかったと思った。僕は、本読んで影響受けるとかがほとんどなくて、人と会って話を聞くのが好きなんで、今日彼と会えたことで、こういう人が、僕の人生をちょっとずつ変えていってくれるんだろうな、と思えました。ありがとうございます」  元山氏には、この話をずいぶんと端折って「村本さんは、勇気をもらえたと言ってましたよ」と告げたのみだったが、いまこの記事を読んでくれたらありがたいと思う。  元山氏に村本氏の印象を訊ねると、「自分の意見を言おうとするのではなく、こちらの話をしっかり聞きに来てくれたのだということがわかって、感動しました」との答えが返ってきた。
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体力を削る中で元山氏が語った言葉
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