「沖縄が分断されたままならいつまでも基地を押し付けられる」。ハンスト元山氏が語った思い

元山氏

「辺野古」県民投票の会代表・元山仁士郎氏

 「辺野古米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票」に不参加を表明した宜野湾市、沖縄市、宮古島市、石垣市、うるま市の5市長に抗議して、「辺野古」県民投票の会代表・元山仁士郎氏が始めたハンガーストライキは、5日目の1月19日16時半頃ドクターストップがかかり、元山氏が家族や関係者の強い要望を受け入れ、終了した。  1月22日現在、全県実施のため条例で定められた二者択一から、妥協策としての三者択一(「賛成」「反対」の他に「どちらとも言えない」の選択肢を設ける)への条例改正など、県議会与野党の間で調整が試みられている最中であり、状況は刻一刻変わっていく可能性がある。  21日の時点で、「辺野古」県民投票の会も、それらの打開策を探る動きを柔軟に受け止めるという声明を発表している。現在進行形の状況の変化を筆者も注視しつづけているところだ。  だがここでは、少し時間を遡って書きたい。

県議会の議決は軽いとでも言いたいのか?

 1月7日、元山氏ら複数の市民団体メンバーが、松川正則市長と面談する際、わたしも同行し、冒頭公開部分の対話やぶら下がり記者会見に加わり、取材させてもらった。  松川市長は元山氏に対して「厳しい情勢」であることを強調していた。「厳しい」の意味するところは、直接的には与党議員たち多数の議決による議会の議決は重いのでそれに反する決定はできないから、県民投票不参加の判断は変わらない、ということだ。  しかし、何度でも言わねばならないが、この県民投票は、署名から県議会での条例制定に至るまで、それこそ正当な手続きを得て実施が決まったのだ。法的にも瑕疵はない。  不参加表明の市長たちは、県議会の議決は軽いとでも言いたいのであろうか。市民の投票権こそ、限りなく重いとは考えないのだろうか。  地方自治法で県と市町村は対等の立場と定められているという主張も聞こえてくるが、それを言うなら、同法では、県と国だって対等の立場と定められている。その沖縄県の「辺野古新基地建設反対」の明確な民意を踏みにじって蛮行に及んでいる政府に対して、「不参加表明市長」たちは、まず第一に猛抗議してはどうだろうか。  前回の記事(参照:「投票で選ばれた市長が、市民の投票する権利を奪うことは許されない」。ウーマン村本氏にハンスト青年が語った言葉-HBOL)でも触れたが、複数の市町村議会が否決した県民投票実施経費の予算は、全額県が負担するものだ。それを市民の税金の無駄遣いであるかのように印象操作しようとする右派グループもあるので、要注意だ。  安倍政権が、民主主義と地方自治と沖縄県民の人権をごく普通に尊重するならば、「普天間基地の危険除去」に名を借りた、沖縄県全体にとっての危険増大・負担増大にほかならない辺野古新基地建設の強行など、絶対にできないはずだし、またそうであったなら、県民投票を実施する必要さえ生まれなかった。  そういう「そもそも論」をすっ飛ばした上でただひたすらに「県民投票」の価値を貶めることを狙った、中央からの圧力込みの乱暴な主張に、自治体議会の保守系議員のみならず首長までが巻き込まれ、同調してしまっている。この現状は、看過できるものではない。民主主義を根幹から危うくする重大な問題行為として、市長たちの「不参加表明」をとらえねばならない。
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松川宜野湾市長が薄笑いを浮かべて発した言葉
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