2012年12月、政権を奪取した安倍晋三は悲願である憲法改正を実現するために長期安定政権を目論んでいた。そのためには、組織票にとどまらず無尽蔵の人員を派遣してくれる統一教会を利用しない手はなかったのだろう。目先の国政選挙や改憲運動を巡る策動のために、安倍は最も関係を持ってはいけない相手からのアプローチを受け入れる。教団サイドと距離を置いていた筈の安倍晋三は、自身の政治的野心と引き換えに悪魔の取引を結んでしまったのだ。
翌2013年3月には、都内で開かれた統一教会の政治組織・
国際勝共連合の太田洪量会長の就任式に多くの自民党国会議員が出席した。そして
前稿で触れた7月の参院選での策動に繋がるという流れだ。
一方、教団側はこの時期、激動の中にあった。
教祖・文鮮明が2012年9月に死去、後継争いは息子同士だけではなく母子の諍いに発展、後継候補だった息子たちが次々に放擲され、妻である
韓鶴子総裁の独裁体制となる。当初の後継者と目された三男・文顯進は、すでに教祖存命中の2010年に追放されていたが、経済部門と宗教部門を受け継いだ四男・文國進(統一教維持財団理事長)と七男・文亨進(統一教会世界会長)も教祖の死後、相次いで教団の実権を握る実の母親・韓鶴子総裁から要職を解かれた。
文顯進は2010年に教団の資産管理団体UCIを手中に収め、2017年にはFPA(世界家庭教会)を創設。文亨進は2015年に米でサンクチュアリ教会を設立、銃砲会社を文鮮明から受け継いだ文國進が経済的支援をしている。韓鶴子派とこれら息子たちの分派の間では、不動産利権や教団マークの著作権を巡って訴訟も提起された。
韓鶴子総裁が息子たちを放擲した背景には、韓鶴子の母親・洪順愛が降霊したとされ教団聖地・韓国清平での役事・先祖解怨を取り仕切っていた霊能者・金孝南の影響があったと言われている。その金自身も後に公金横領・私的流用疑惑が発覚し追放された。以降、表向きの後継者は世界会長を務める五女の文善進だが、実際には韓鶴子の秘書室長が実権を握っていると言われている。
歴代の日本の会長がこれら分派となった三男派や七男派に流れるなどしたが、日本の教団組織は依然として主流派である韓鶴子派の統制下にある。
この韓鶴子体制に組み込まれる日本統一教会が、以後も安倍政権との緊密関係を構築し続けている。政局の背後で連綿と続く安倍政権と統一教会の癒着は、現在進行形の問題だ。
次稿では具体的にどの政治家が統一教会に便宜を図り、関係を持ってきたのか、そしてその背景にあるものを時系列に沿って検証する。(文中敬称略)
<鈴木エイト(やや日刊カルト新聞主筆)・Twitter ID:
@cult_and_fraud>
すずきえいと●滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『
徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)
すずきえいと●やや日刊カルト新聞主筆・Twitter ID:
@cult_and_fraud。滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教カルトと政治というテーマのほかにカルトの2世問題や反ワクチン問題を取材しイベントの主催も行う。共著に『
徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)、『
日本を壊した安倍政権』(扶桑社)