なぜベンチャーはブラック企業になりやすいのか? 起業家にとっての「労務管理」

「楽しくてもブラック」な会社はある

――ブラック企業というイメージは、辛かったり、死にかけていたりするイメージを持っている人も多いと思うんですよね。つまり「楽しかったらブラックじゃないんだ」と思っている人がほとんどだと思う。そこを利用されているようにも思います。学生さんは特に「つまらないけど福利厚生がしっかりしている大企業」と「死ぬほど働くけど楽しいベンチャー」みたいに二極化して考えているケースが多いのではないでしょうか。 上西:「やりがい搾取」という言葉がドラマでも流行りましたけどね(笑)。  そこそこ面白い仕事で、ちゃんとした労働条件を勝ち取ればいいんじゃない?と思うんですよね。でも、積極的にそういうことを言う人が少ないですよね。 ――ベンチャー企業、特にスタートアップ企業は、自分自身が金融商品になるわけで、投資家からすると出来るだけ早くエグジット(上場や売却)してほしいわけですから、起業家や経営陣自身もプレッシャーを受けるわけですよね。上場されたりすると、社会の公器になるわけですから更にプレッシャーがあって、プライベートで遊んでいるときも気が休まらず、趣味もこっそりやる人もいます。プレッシャーをかける側も、別の側からプレッシャーを受けている部分があるんです。また、ベンチャー企業の中には、投資を受けるために赤字でもどんどん成長していって、その次のラウンドで投資を受けて、上場したり会社を売却する、というモデルを取っている企業も多くありますが、このような成長モデルのもとでは、どうしても時間の余裕がないので、過重労働になりやすいのではないでしょうか。それから、中小企業だと、そもそも利益を生む体質になっていないがゆえに過重労働に依存してしまう部分があると思います。 上西:ベンチャーで働くということは、組織が整っていないところで働くということですからね。  まず、自分が労働法を知らないままベンチャー企業に行くということはすごく怖いことだよ、ということですね。  自分が知っていれば、社長の話を聞いたり、面接やインターンシップに行ったとき、その会社がまともかどうかはある程度判断できると思うんですよ。でも、自分の中のモノの見方がまったくないと「社長すごい」と心酔しちゃうんですよね。 ――「こんなに任せてくれる会社は他にはない!」とか(笑) 上西:「一緒に成長したい」とかね(笑) ――でも、社長は株を持っていて、自分は持っていなかったりするわけですよね。 上西:なかなかそういうふうには冷静に見られないですよね。
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やりがいがあろうが働きすぎで人は死ぬ
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