一方、年明けの2019年1月4日に対抗措置として韓国側が映像を公開しました。韓国側の映像は、海自側の映像と全く異なり、機密漏洩につながり兼ねない情報は殆どありません。冒頭からBGMを挿入するなど、典型的なプロパガンダ映像ですが、とても良く練られた映像作品です。
[국방부] 일본은 인도주의적 구조작전 사과하고 왜곡을 즉각 중단(ROK Ministry of National Defense)
日本語訳は、徐台教(ソ・テギョ)氏の記事を参照しました。(参照:
“[全訳] 韓国国防部「反論映像」全テクスト(徐台教) – 個人 – Yahoo!ニュース”徐台教(ソ・テギョ) 2019/1/4 19:52)
この映像を見ますと、次のことが判ります。
・冒頭に新たな映像が入っており、
被救助船がP-1からの映像に映っていた漁船であることが分かる。また、電照施設を持ち、イカ釣り漁船と思われる。
・低空で接近飛行をしたP-1の映像はなく、遠景のみであった。映像として新たな情報は、冒頭のもののみであり、あたり前のことだが機密保持に強く配慮しているものと思われる。
・
韓国側映像にも証拠能力はない。そもそも、韓国側の主張を周知するためのものであって、論争における証拠として作成されていない。
・韓国側は、
ICAO条約の引用など、日本側の主張の弱点を突いている。そもそも、ICAO条約を引用するなどは軍用機では無意味なことで、日本国内向けの説明が国際的には通用しないことを露呈させている。(わざわざ無用な弱点を作っている。)
・韓国艦船の活動は、
遭難漁船の人道的な救助活動(SAR: Search and Rescue)であったと一貫している。日韓SAR協定(参照:
日韓SAR協定 1990年5月25日)により「必要があれば」相手国(この場合日本)に連絡、情報の提供を行うこととなっているが、今回韓国側は必要ないとしたのであろう。
・韓国側は、
P-1が直上を接近飛行し、脅威を感じるものであった(威嚇飛行であった)と主張している。
映像からは直上を飛行している場面はない。日本側公開映像からも広開土大王の直上を飛行している場面は確認できない。ただし、
4発大型機であるP-1が高度150m、距離500mを飛行すれば、相当な迫力があることは同意できる。
・韓国側は
STIR180を光学捜索モードで使用し、P-1接触時にはそれを用いてP-1を撮影したが、
電波の発振はしていないと一貫して主張している。
・韓国側は、
北朝鮮籍の遭難漁船への救難活動(SAR)中であり、P-1の行動はそれを威嚇するものであったとして謝罪を求めている。
・韓国側は、
P-1による国際VHF(FM)による通信を聞き取れなかったと主張している。しかし、
映像では、ハルナンバー(艦首番号)まで聴取可能であったことが分かる。録音されているが、通信員には聞こえなかったという説明もできるが、やはり
返答しなかったことへの説明にはならない。
・韓国側は12月28日の日本による映像公開を
事態の政治利用と認識している。
・韓国側は、
実務者協議の継続により、事実確認と相互理解による解決を求めている。
・韓国側の映像を見ると、
日韓双方の軍事機密に抵触する映像を避けており、日韓による実務者協議での迅速な解決の道筋を閉ざしていないことが分かる。