日本国の機能不全と労働者の軽視。臨時国会における入管法改正の審議を振り返る

衆院本会議の平沢勝栄議員

衆院本会議で、さまざまな問題点を一切無視した答弁を行った平沢勝栄議員。(衆院インターネット中継より)

 日本の未来とはなんだろう、と問われたら、どう答えるだろう。私はこのツイートこそが、日本の未来だと思う。 “初当選同期の高村正大代議士のパーティにて司会を務めました。お父様の高村正彦大先生もいらっしゃり大盛況でした。これからも同期として切磋琢磨しながら精進して参ります。(一緒に司会をした同じく同期の金子俊平代議士。身長190cmで横に立ちたくない)” 中曽根康隆議員2018年12月11日のTweet  高村議員、金子議員、中曽根議員には共通点がある。  同期当選であり、男性であり、父・祖父が政治家であり、慶應義塾大学出身であり(そのうち二人は幼稚舎から慶応で、東京育ち)、若手の議員のホープと目されている。  彼らはこれから引退までの30~40年、日本の政界の中心で有り続けるだろう。これが「日本の未来」だ。  私は臨時国会の終盤に、このようなツイートを見て、一体日本という国家はどのような未来を描くのだろうと考えた。  国家の大きな物事が小さなインナーサークルで意思決定され、その経緯が見えなくなっている。そして、その反動として、国会はますます機能不全に陥っている。  そして、ある一部のインナーサークルを除く、多くのはたらく人の権利は、ますます軽視されるようになっている。  日本の現在は、なんだろう。臨時国会で何が起きたのか、改めて考えてみる。

入管法改正の何が問題だったのか

 そもそも入館法改正は、臨時国会の開幕前に突然持ち上がった話題だ。突如として、生煮えのまま政府から提出され、委員会での38時間の質疑を経て採決された。  採決の時点で、受け入れ上限すら決まっておらず、ほとんど細部が白紙のまま、外国人を受け入れることだけが決まったのだ。(その後、閣僚会議で2019年度から2023年度までの外国人の受け入れ見込み数を5年間で34万5,150人とし、これを上限にすると決定)  本来、立法府というのは、法案を提出して、それを審議する場である。しかしながら、重要な部分は省令によって決める、というのでは、立法府が本来審議するべき事項は一体なんなのか、と思われても仕方がないだろう。  法案が審議入りする前の予算委員会では、山下法務大臣はこのように述べていた。(2018年11月1日の衆院予算委員会) ————- 山下貴司法務大臣:まず、受入れの規模に関しては、現在、農業、建設、宿泊、介護、造船など十四の業種から受入れの見込み数について精査をしているところでございます。それについて各省庁と作業中であり、できるだけ早く示せるよう鋭意作業を進めておりますが、近日中に法案を提出予定であり、法案の審議に資するよう鋭意作業を進めたいと考えております。 長妻昭議員:そうすると、法案の審議入りまでには業種の数を確定して受入れの規模も確定するということでよろしいんですね。 山下法務大臣:法案の審議に資するように鋭意作業を進めたいというふうに考えているということでございます。 長妻議員:これ、全然生煮えなんですよ。人数の規模もわからないということでありまして、当然、上限はつけるんでしょうね、上限、受入れ人数の。お答えいたします。 山下法務大臣:まず、上限というのは数値ということかということでございますけれども、今回は数値として上限を設けるということは考えておりません。 ————-  このように、そもそも受入数の上限すら決まらない制度運用が当初より予定されていたのだ。  このような政府の姿勢は、そもそも立法府の存在意義をなくすものであり、今に始まったことではないけれども、本当に国会を有名無実にしようと考えているのだ、と思わざるを得ない。  入管法の審議時間は、IR実施法よりも更に短い17時間だ。安保法案の116時間はもとより、TPPの70時間、働き方改革関連法の39時間と比べても極めて短いことがわかる。(※参照:【図解・政治】重要法案の衆院審議時間 2018年11月時事ドットコム)  日本の国の形を根本的に変える法案が、このようななし崩し的な質疑の中で決まってしまったのだ。
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「臭いものに蓋」の国会
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