相手の力を最大限に引き出したうえで、それを上回って勝って見せる。そんな般若の戦いぶりにMC正社員は興奮しつつも、「やべぇ、俺ってダサいな」と感じたという。
自分が呼ばれてないことに嫉妬したり。すごく小さなことにこだわっている自分に気づいたんです。自分の大好きなMCバトルの業界全体のことを考えたら、『フリースタイルダンジョン』みたいな番組は、自分に関係なくても始まったほうがいい。般若さんのバトルをまた見られるのも、やっぱり嬉しいじゃないですか。そのことに気づいたんですよね」
直接言葉を交わした機会はそう多くないが、MC正社員はそうやって般若からさまざまな影響を受けてきたそうだ。
「行動している背中を見るだけで、『この人についていきたいな』と思っちゃう人ですよね。『フリースタイルダンジョン』のモンスターたちも同じだと思うんですよ。みんなが般若さんに魅了されて、『ラスボスの般若さんを出すわけにはいかない』という責任感を持って戦っていると思うし、最近の呂布カルマの強さも、般若さんの影響が大きいんじゃないかな……と勝手に思っています。あの番組でも般若さんはほぼ喋らないですけど、やっぱりボスの存在感がある。喋らずとも態度で示して、周囲の人たちがついてくるって、理想のリーダーですよね」
こうしたカリスマ性はビジネス界にも見られるものだが、そんな“理想の上司”のような立ち位置をマイク一本で作り上げた般若は別格と言えよう。また、MCバトルやラップでは“声”が重要となるが、それ以外の場所では寡黙というギャップも男心をとらえる一因なのかもしれない。
近くで接してきたラッパーや、般若の活動を追いつづけてきた人たちには、その魅力は十二分に伝わっているわけだが、「それを知らない人も1月11日の般若さんの武道館ライブには行ってほしい」と話す。
「最近MCバトルにハマった若いコのなかには、般若さんがどんな人なのか知らない人も多いと思うし、『たまにバトルに出てくる強い人』程度に思っている人もいると思うんですよ。ただバトルに強いだけじゃなくて、本当にスゲエ人なんだということは、ライブを見ればわかると思います。この記事を読んだ人は全員見に行ってください」
<構成/古澤誠一郎>
【MC正社員】
戦極MCBATTLE主催。自らもラッパーとしてバトルに参戦していたが、運営を中心に活動するようになり、現在のフリースタイルブームの土台を築く
戦極MCBATTLE主催。自らもラッパーとしてバトルに参戦していたが、運営を中心に活動するようになり、現在のフリースタイルブームの土台を築く