スタッフが後ろにいるのは、研修中に参加者が居眠りをしてしまったり、騒いだりした場合に注意をするだと言う人もいる。役員が座っているのは、居眠りや騒いだりすることをけん制するためだという考え方だ。
居眠りをしてしまったり、反対に参加者が騒いだりしてしまう研修など、やめてしまえばいい。研修参加者はサービスを受ける側、研修主催者や講師はサービス提供者である。サービスを受ける側が興味や関心をもたない、サービスを獲得する意思がないのだから、そもそも提供する意味がない。
これは解説や説明をするだけ講義型の研修では、よくあることだ。1杯のコーヒーよりも2杯目のコーヒーのほうがおいしさを感じないという「限界効用逓減の法則」を持ち出すまでもなく、どんなにすばらしい講義でも、時間の経過とともに参加者の関心度や集中度が低下することは当たり前のことだ。
そうさせないためには、研修講師こそがさまざまなスキルを発揮するべきであり、居眠りや騒いだりすることをけん制するために監督するのは本末転倒だ。
さらに、講義型ではなく演習型の研修であれば、後ろに監督者にいることは研修効果を大きく下げてしまう。2人一組のビデオを撮りながらのロールプレイングや、付箋を使いながらのグループでの検討、全体での討議などの演習をする際に、後ろに監督者がいてものびのびと実施できるだろうか?
監督している人がスタッフであろうと役員であろうと、後ろで何かを書いていれば、参加者は一挙手一投足をチェックされていると思ってしまうものだ。背面管理をされた状態では、気持ちよくのびのびと演習できるはずがない。
だとすれば、監督者を置かず、事前に十分な準備や講師との打ち合わせをしたうえで、研修を実施すればよい。
スタッフや監督者が同席するのは、参加者を見張るためではなく、講師をチェックするためであるという目的もあるかもしれない。だとすれば、後ろで監督するのではなく、いち参加者として他の参加者と同じ席につき、研修を受講することがお勧めだ。
特に演習型であれば、後ろで傍観するよりも、実際に他の参加者と同じテーブルについて演習してこそ、効果の有無も実感できるだろう。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第116回】
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(
単行本、
新書、ともに扶桑社)、『
99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社)、『
ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある