《8月の安値からリラは30%上昇!》8月の大暴落で年初から約50%安を記録したトルコリラ/円だが、その後、対米関係の改善に利上げ、原油安が重なり、3か月で30%も上昇。エミン氏はこの上昇トレンドが’19年3月の地方選まで続くと予想
「10月には拘束していた牧師を解放して、経済制裁は解除されました。その直後に起きた、サウジアラビアの駐トルコ領事館内でのジャーナリスト殺害事件の影響も大きかった。皇太子の関与が濃厚となったため、大統領就任後初の外遊先にサウジを選ぶほど関係を強めてきたトランプ氏も、サウジと距離を置かざるを得なくなった。中東の盟主が影響力を弱めるなかで、エルドアン大統領はドイツとの関係改善にも動いて存在感を強めました。欧州にとってトルコは移民の受け皿として欠かせない存在。トルコがなくなれば大量の移民が流れ込んできますから。’19年5月の欧州議会選挙を前に、ドイツをはじめ各国で反移民を掲げる勢力が存在感を強めていることを踏まえて、エルドアン氏は交渉に動いたわけです」
こうした外交手腕に加えて、原油相場がトルコの追い風に。
「トルコが抱える経常赤字はGDP比で5.5%にも上りますが、このうち5%分を占めているとされるのが、原油の輸入。原油価格の下落は経常収支の改善に直結するので、トルコリラと原油価格は逆相関関係にあるのです」
《原油価格と逆相関のトルコリラ》’10年頭の原油先物価格とトルコリラ/円を起点に変動率をグラフ化すると、原油価格が上昇するときにはトルコリラが売られていることがわかる
実際、原油先物価格が1バレル=76ドルの高値をつけて反落して以降、トルコリラは高値を切り上げている。8月の安値から比較すれば、30%もの上昇を見せているのだ。この上昇トレンドはしばらく継続する可能性も。
「1つにはサウジの事情があります。ジャーナリスト殺害事件で世界から反発を受けているなかで、原油価格に対するサウジの力が弱まっている。値を吊り上げられないので、逆相関のトルコリラは買われやすくなる。加えて、’19年3月にトルコの統一地方選が控えています。’18年の大統領選でエルドアン氏は52%の得票率でしたが、このうち12%は連立政権を組む民族主義者行動党(MHP)の得票。エルドアン氏率いる公正発展党(AKP)だけでは、過半数を獲得できていないんです。そのため、地方選に向けて広く支持が獲得できる中道寄りの政策や外交ポイントを稼がざるを得ない。これまで何度も中銀に利下げ圧力をかけて、トルコリラ売りを誘発してきましたが、選挙まではそういった言動も控えるでしょう。3月までのトルコリラは底堅い値動きが続く可能性が高いのです」
《’19年トルコ注目ポイント》
①3月31日トルコ地方選
’18年6月の大統領選におけるエルドアン大統領の得票率は52%だったが、所属の公正発展党(AKP)の得票率は40%にとどまったため、地方選で連立与党が多くの議席を失う可能性も……
②トルコ中銀の利上げ
’18年9月に政策金利を6.25ポイント引き上げて年24%としたが、エルドアン大統領は利下げ圧力を強めている。インフレが続いているため利下げは現実的ではないが、利上げ期待がしぼむとトルコリラにはマイナス。選挙後のエルドアン氏の発言に要注意
③原油相場の下落
トルコのGDPに対する経常赤字は5.5%に上るが、うち5%分が原油の輸入にあたるとされる。原油価格が下がれば、経常赤字が縮小するため、トルコリラと原油価格は逆相関の関係にある