中国にあるファーウェイの小売店(遼寧省瀋陽市)
アメリカが中国の華為技術(Huawei=ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)などの製品や役務を政府調達などから排除する強硬策に出たのを受けて、日本政府も事実上、2社を排除する方針を打ち出した。この決定にはどのような背景があるのか、妥当なのかどうか、どのような影響が生じるのだろうか。
貿易問題や通信分野の覇権争いで対立する米中。米国政府はファーウェイやZTEを名指しで政府調達から排除した。さらに、同盟国に中国通信大手の排除を要請した模様だ。そして、日本政府は「IT 調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ(以下、IT調達申合わせ)」を公表した。
そもそも、日本政府はサイバーセキュリティにまったく無頓着なわけではなく、従来から中国製品を警戒していた。それでも敢えてIT調達申合せを公表したのは、米国政府の要請に呼応して同調姿勢を明確化する狙いなのだろう。
ただ、日中関係が改善傾向にある中で、日本政府としては中国政府を過度に刺激したくないはずだ。日本政府はIT調達申合せについて「防護すべき情報システム、機器、役務などの調達に関する方針や手続きを定め、特定の企業や機器の排除が目的ではない」と説明し、名指しは避けて中国政府に配慮した格好だ。
IT調達申合せの公表前には複数の報道機関が日本政府による中国通信大手の排除を報じ、それに中国政府は強い表現で反発した。しかし、IT調達申合せの内容を公表後は不快感こそ示したが、発言は抑制的な表現にとどめた。名指しで排除されない限り、中国政府としては強い表現での反発は難しく、この点は日本政府の狙い通りだ。
IT調達申合せの内容は米国に同調姿勢を示し、また中国には配慮した結果と言える。これが日本政府の落としどころだが、米中に挟まれた複雑な立場が浮き彫りになった。