ビジネスシーンで受けがちな反論。こうすればうまくいなせる
当連載では以前、リアクション誘導話法の分解スキルを発揮することにより、相手の意向をふまえたうえで段階的に誘導できるようになり、相手を巻き込みやすくなることを紹介した。しかし、この方法は、段階的に誘導する方法なので、誘導し終えるまでに、ある程度の時間を要する。
ビジネススキルを向上させる演習をしていると、「より短い時間で誘導できる手法がないだろうか」という相談を受けることが多い。今のところ、最も短い時間で誘導できる方法が、「結語転換手法」だ。ただし、この手法は、あるパターンの反論に接したときにしか使えない。
たとえば社内外の折衝をしてよく受ける反論に、「Aということはわかっているけれども、Bなので反対だ」というパターンのものがある。「製品がいいことはわかっているが、価格が高い」「実施する意味はわかっているが、時間がない」というようなケースだ。
「結語転換手法」とは、このAとBを入れ替える方法だ。「価格が高いと思っているとはいえ、製品がいいことは評価しているのですね」「時間がないとはいえ、実施する意味はわかっているのですね」というようにする。日本語は、結論が文末に置かれる。そこで前段と後段を入れ替えることによって、結語を転換してしまうのだ。
その結果、「もちろん、製品がいいことはわかっている」「たしかに、実施したほうがよいに違いない」という返答が返ってきたら、製品のよさや、実施する意味について意見交換をする。その価値をさらにしっかりと認識してもらうことができれば、折衝が首尾よく進むようになるのだ。
この「製品がいいことはわかっている」「実施する意味はわかっている」というフレーズは、相手が口に出したことなので、それを聞かれて否定する相手は極めて少ない。単純なことだが、相手が口に出したフレーズを取り上げて、折衝していくことは、巻き込みのためのとても有効な方法だ。
「製品がいいことはわかっているが、価格が高い」という反論を受けて、結語転換をせずに価格が高いか低いかを議論してしまうということは、相手の土俵で議論するようなものだ。結語転換をするということは、「製品のよさ」というこちらの土俵に相手を呼び込む……。そのような効果が期待できるのだ。
「製品がいいことはわかっているが、価格が高い」という反論を受けて、すぐさま低い価格を提示してしまっては、値引き競争に陥る。結語転換は、相手がある程度認めている価値に基づいた折衝をするための転換話法でもある。
ましてや、製品の質を落として低い価格を提示してしまうことは、せっかく相手が一定の評価をしている「製品はいい」という部分の魅力を自ら削いでしまうので、折衝がうまくいかなくなるのは当たり前だ。
対話の相手を自分の土俵に呼び込む
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