さらに、望月記者だけは質問中に司会者から「質問は簡潔に」「結論を」などと計4回も注意されている。一方、他2人は1度も注意されていない。もし実際に望月記者の質問時間が他記者よりも異様に長いのあれば、この注意は妥当であろう。その妥当性は次の棒グラフで検証したい。
この棒グラフは、平均質問時間(青)と司会者から注意された回数(赤)を示している。
平均質問時間は他2人が15秒前後に対して、望月記者は22秒とやや長い。だが、後ほど紹介する質疑内容を見ればわかる通り、望月記者は
質問を始めてから10秒も経たない内に受けた注意が2回もある。質問開始から10秒が注意の目安であるならば、15秒も質問している他2人の注意回数が0回なのは不自然だ。始めから司会者は望月記者だけを注意すると決めていたとしか考えれない。これはもはや「注意」ではなく、「妨害」と呼んで差し支えないと判断し、グラフや本文でも「妨害」と記載する。
ちなみにこの司会者は内閣府職員(総理大臣官邸報道室長)の
上村秀紀氏。時間厳守を徹底しようとする仕事ぶりには感心するが、やってることはイジメそのものだ。
「あなたの予測に答える場ではありません」が長官の答え
ここまでの内容を読んで、
「望月記者の質問内容が失礼だから、司会者が注意した」
「望月記者の質問内容が低レベルだから、菅長官は相手にしなかった」
と考える読者の方もいらっしゃることだろう。
そこで、具体的にどのような質疑内容だったのか視覚化した。
1問目、
知事選挙圧勝による民意を無視して土砂投入に踏み切ることで、
沖縄県民にさらなる負担を強いることについて、政府の考えを問うた望月記者。それに対する菅長官の回答は「
今、申し上げた通りです」という耳を疑うものであった。確かに、先に質問した2人の記者への回答でも辺野古に関する見解を長官は述べているが、
望月記者の質問内容と他2人の質問内容は異なっており、その回答を一言で済ませるのは横柄すぎる。
2問目、
土砂投入を強行したのは来夏の参議院選挙への影響を最小限にしたいという思惑があるのでは、と鋭く指摘した望月記者。この視点は他2人の記者は全く触れていないため、先ほどのような「今、申し上げた通り」という回答は絶対に通用しない質問内容だ。
だが、これに対する菅長官の回答はまたも耳を疑うものだった。
「
あなたの予測に答える場ではありません」
記者が独自の視点や見解を交えて質問することは特段おかしなことではない。違うのであれば「そのようなことはありません」とでも答えればよいだろう。しかし、それすらもせず、望月記者への個人攻撃のような文言を敢えて使い、否定する菅長官。
政府が言いたいことだけを都合よく記事にしていれば良いという菅長官の思惑が透けて見える。
また、2問とも
質問を始めて間もないタイミングで上村室長は「簡潔に」と早くも妨害を始めている点も見逃せない。
これらの視覚化を総括すると望月記者は、質問中には上村室長から不当な妨害を受け、菅長官からの回答はわずか2~3秒と短い上、質問に全く答えてもらえていない。
そして、
同席している記者クラブの記者たちはこの異様な会見を黙認し、会見場には記者の抗議の声ではなくタイピング音が響き渡っている。
いじめ首謀者の菅長官、第一共犯者としての司会者、上村室長。そして、いじめを見て見ぬふりをする記者クラブの他の記者たち。まるで小学校のいじめのような構図が、国政とジャーナリズムの現場で、大の大人が繰り広げているのである。
何度も辺野古移設反対の民意を示しながら無視され踏みにじられ、ついに土砂投入という悲劇に見舞われた沖縄県。そして、なおも無関心な本土の住民たち。
同じ日に永田町と辺野古で起きた2つの出来事は「政府の横暴」、「当事者だけの抵抗」、「当事者以外の無関心・諦め」という点で繋がっている。
<文・図版・動画作成/犬飼淳 TwitterID/
@jun21101016>
【犬飼淳氏】
サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。最近は「赤黄青で国会ウォッチ」と題して、Youtube動画で国会答弁の視覚化に取り組む。
犬飼淳氏の(
note)では数多くの答弁を「信号無視話法」などを駆使して視覚化している。また、同様にYouTubeチャンネル(
日本語版/
英語版)でも国会答弁の視覚化を行い、全世界に向けて発信している
TwitterID/
@jun21101016
いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身の
noteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。
noteのサークルでは読者からのフィードバックや分析のリクエストを受け付け、読者との交流を図っている。また、日英仏3ヶ国語のYouTubeチャンネル(
日本語版/
英語版/
仏語版)で国会答弁の視覚化を全世界に発信している。