宮古馬を健全に育てている牧場では、仔馬たちが楽しそうに遊んでいた(2017年4月)
『宮古毎日新聞』の記事では、N氏やS氏と思われる人物が「金銭的に厳しい」「自分のものでもない宮古馬を預かるメリットがない」「虐待はしていない。(中略)ほかの家畜と同様にできる範囲での飼い方しかできない」と言っている。
しかしN氏が「いずれ天然記念物の指定から外れれば、自由に売買できる」という期待のもとに多数の宮古馬を引き受けたということは、関係者の多くが知っているという。その当てがはずれたので返したいだけのように見える。実際、あるマンゴー農園経営者には「もうすぐ天然記念物の指定が外れるから、1頭5万円で買わないか」と持ちかけていたというのだ。
一方のS氏も前述のように、適切な育て方をせずに2年間で4頭中3頭の馬を死なせているのに、「妊娠している牝馬を欲しがる」といわれてしまう人物だ。果たしてこのような人々が、沖縄県の天然記念物を預かってよいのだろうか?
また、こうした悪質な飼育者たちを黙認して、宮古馬を苦しめ続けた宮古島市行政の責任も重い。ただ、宮古馬の保存は今年3月まで市の畜産課が担当し、彼らがこのような状況を作り出してきたのであり、4月から宮古馬の担当となった生涯学習教育課は、いきなりその矛盾を背負わされることになり、気の毒な部分もある。
宮古馬保存会の会長も、昨年度までは下地敏彦宮古島市長が担っていた。これまで、宮古馬を保存からはずす動きを率先して進めようとしてきたのは、ほかならぬ下地敏彦市長本人だ。今年から保存会会長は下りているため、素知らぬ顔をするつもりなのかもしれない。しかし、ここまで放置してきた責任は下地市長も避けられないだろう。
現状を放置したまま、3月31日の返納の日を待っていたら、また死んでしまう馬が出てくる可能性もある。そうした事態を避けるために、12月19日の宮古馬保存会会議では、すぐさま馬をサイアク2牧場から引き離し、予算調整を行ってまともな飼育者に預けることが検討されることを願ってやまない。保存会がどのような決定をするか、今後も注視していかなくてはならないだろう。
ただ、この問題は、宮古島市や飼育者だけでは到底解決できない問題だ。どのような形で種の保存を行っていくのか。動物たちの命をどう扱っていくのか。日本全体で考えて行くことが必要なのだろう。
<取材・文/『週刊SPA!』宮古馬取材班>