日本の外務大臣が「次の質問どうぞ」しか言わなくなった日

北方領土が日本の領土だと言えなくなった外務大臣

 僕たちは子どもの頃から「北方四島は日本の領土だ」と教えられて育ちました。  歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島の北方四島は、戦後のどさくさに紛れてソ連(現・ロシア)が勝手に持って行ってしまったものであり、これは日本の領土なので返してもらうように交渉を続けている。僕の認識はこれまでの日本政府の公式見解であり、「北方領土のうち2島はロシアのものだけど、2島は日本のもの」なんて話は今まで一度も聞いたことがありません。  しかし、最近になって「ヒゲの隊長」こと佐藤正久さんをはじめ、それまで「保守」を名乗ってきた人たちが突然、「北方四島すべてが日本のものだと主張するのは難しい。常識的に考えれば返還してもらえるのは2島だ」と言い出しました。  おいおいおい、あなたたちが歴史の教科書を修正しているのは知っていたけれど、「日本が主張できるのは2島だけ」なんて初めて聞きました。まったく返してもらえないよりは2島でも返してもらった方がいい人もいるのかもしれないけれど、パンのカツアゲと領土問題は全然違うのです。食べようと思っていたパンをヤンキーにカツアゲされたって言う話なら「ぶん殴られるのは痛いし、4つのパンのうち2つを返してもらえたなら、全部取られて昼飯が何も食えなくなっちゃうよりマシだよね。あぁ、このカレーパン美味しいな。取られるのがカレーパンじゃなくてよかった!」という話でいいかもしれませんが、これは領土問題です。日本の領土をしっかり全部返してもらえるかどうかという話に妥協が許されるはずはありません。  そりゃロシアだって、そう簡単に返してくれるはずはないでしょう。巷のヤンキーだってカツアゲしたパンを返してくれることはありませんでした。それがプーチン大統領ともなれば、ヤンキー以上に交渉は難しいでしょう。しかし、パンの場合は「食べちったよ!」と言われてしまえば終わりですが、北方領土は食べられません。ゆえに、なくなることはありません。安倍政権がダメでも次の政権が、次の政権がダメでも次の次の政権が交渉し、ロシアだってプーチン大統領がダメでも次の大統領が、次の大統領がダメでも次の次の大統領が応じてくれるかもしれません。そのためには「色丹島」のことを「しゃこたん」と読んでしまうような「車の改造でもするんか!」という程度の低い国会議員が交渉するのではいけませんが、しっかりと返してもらうんだという気概のある国会議員が粘り強く交渉するしかないのです。  ところが、安倍晋三総理のことを「愛国者」だと思っている人々もいるようですが、僕たちの生命に関わる重要なインフラであるはずの水道をヴェオリア社をはじめとする海外の企業に売り渡す水道民営化法案を強行採決する集団が、安倍晋三先生が「総裁」を務める自民党です。これを表す的確な2文字は「売国」だと思いますが、こんな人物が総理大臣をやっているせいで、たびたびロシアに行っていることは知っていましたが、いつの間にか、僕たちの北方領土は「北方二島」だったことになり、しかも、どうやら島の主権が日本にあるとは限らないっぽい話になってきました。どんな交渉をしているのかが全然わからないので、ロシアのメディアが報じている話をチェックするしかないのですが、どうもロシアではそう言われているようなのです。

長年の交渉を台無しにする「外交の安倍」

 もし北方領土が2島しか返ってこなくて、しかもその主権はロシア側にあり、日本人はパスポートを持って行けば入れてもらえる程度の話だったらどうでしょうか。それで「北方領土が返還されました!」と言われて、日本人は嬉しいのでしょうか。ぶっちゃけた話、水道代が5倍になるかもしれない水道民営化、僕たちの給料がさらに減るかもしれない入管法改正、さらに追い打ちをかけるように消費税を10%にされていながら、それでも政治に無関心を貫くスーパージャパニーズの皆さんが圧倒的多数なので、もしかしたら北方領土がそんな形で返ってきても、お花畑のネトウヨと一緒に「さすが安倍ちゃん、歴史を作った!」とか言っちゃうのかもしれませんけど、これで「日露平和条約」を結んだ瞬間、日本の領土は島2つだったということで確定をします。  今、日本と韓国の間では徴用工問題が勃発しています。韓国の裁判所が戦時中に強制労働させられた人たちに賠償金を払うように命じる判決を出して、日本は「あの問題はとっくの昔に解決しただろ!」と言っているのですが、今度は「国後島と択捉島を返してください」と言ったら、まさしく徴用工問題と同じように、「その問題はとっくの昔に解決しただろ!」と言われるのです。  ロシアは現段階からスタンスを明確にしており、「北方領土問題って2島の問題だったよな?」と言っています。これまで交渉してきた日本の政治家たちなら「バカを言ってくれちゃ困る、4島に決まってるだろ!」と言い続けてくれたわけですが、ここに来て安倍総理が「2島っすね!」と言い出しているのではないかという疑惑があるのです。  いくら水道を海外の企業に売り渡すような人物でも、さすがに北方領土をロシアに差し上げるようなことはしないだろうと思っていたのですが、めっちゃくちゃ可能性あるところまで来ています。  安倍晋三総理がトランプ大統領に言われるがままに1兆円も払ってステルス戦闘機を100機もお買い上げしたことは知っていましたが、今度はプーチン大統領に言われるがまま、北方領土を差し上げる可能性が出てきている。これはさすがに売国のレベルが違います。「韓国に竹島をあげよう」なんて言ったら日本列島がひっくり返るほどの大ブーイングと大バッシングが晒されると思いますが、「ロシアに北方領土をあげよう」には「だよねー!」です。ネトウヨは一体、どんな脳味噌をしているのでしょうか。そして、いよいよ河野太郎外務大臣は11月22日の記者会見で、記者から「北方四島は我が国固有の領土とお考えか」と問われ、こんなふうに答えています。 「政府の考えを申し上げるのは一切差し控えたい」  おい、嘘だろ!? 交渉過程の外交機密であれば答えられないのも仕方ありません。でも、北方領土が日本固有の領土であることは、秘密でも何でもない公然とした事実のはずです。政府の考えでも何でもない「公然とした事実」じゃありませんか。それとも、本当は違うんですか? こんなもの、記者に向かって「オマエは本当に日本人か? 本来は答えるまでもない愚問中の愚問だが、こんな質問をされたのでは黙っちゃいられないので、オマエが二度とこんなくだらない質問をしないように答えておこう。北方四島は日本固有の領土だ!」でしょう。なんで差し控えてんだよ! なんで、これから一切答えないスタンスなんだよ!
次のページ 
日本の外務大臣が九官鳥になった日
1
2
3
4