「中国人へのネガティブイメージを変えたい」西川口の清掃活動を行う麻辣湯店経営者<越境厨師の肖像・第2回>

横浜から毎月参加する人も

 告知や宣伝を微博(Weibo。中国製のSNS)や微信Wechatでのみなため日本人にまだ知れ渡っていないということもあり、この活動を知る人も、参加する人も、そして「四川麻辣烫」への来店客も、共に、現在のところほとんどが中国人であり、日本人は僅かだ。  ただ、今年の10月以降、Twitterで多くのフォロワーを持つアカウントからの発信で、西川口で自主的に清掃活動をしている中国人店主の話題が数回タイムラインに現れた。それが今回Ayaさんを訪ねるきっかけにも繋がった。Ayaさんの思いは、着実に広がりつつある。  話を伺ったあと、筆者も清掃活動へ実際に参加した。  あいにくやや冷たい風が吹く曇天で、開始当初はやや凍えていた体が、夢中に拾い続けるうちに忽ち温まった。  参加者の一人、羅さんという女性は、微博(Weibo)でこの活動を知ってから、毎月横浜から参加し続けているのだそう。終始笑顔が絶えず、この活動について「开心!(楽しい、嬉しい)」を連呼する。彼女の感想によると「回数を重ねるごとにちょっとずつだけれどゴミは減ってきている。」そうだ。効果がジワリと現れているのかもしれない。  清掃を終えたAyaさんは、12年住んでいる日本について最後にこう口にした。 「入管法が改正されることでいろいろな議論が起きてるけど、日本人の友人から技能実習生の置かれている環境は、”奴隷”のような労働環境が多いと聞きました。そういう状況が払拭されるのであれば、日本が外国人を受け入れやすくすることは日本にとっても外国人にとってもいいことだと思っています。  ただ、カナダなどへ移住した中国人の友人は、10年も住めばカナダを『自分の国』と思うようになっています。私も日本のことをそう思いたい。でも、実は私は日本を『自分の国』と思えたことがないんです。なぜかといえば、それはメディアなどでは、常に中国人のネガティブなところが誇張されて報じられて、いつまでも受け入れられている感じがないんです」  日本でビジネスをして、日本で税金を収めている。できることならば、もう一つの故郷として日本にも愛着を持ちたい。彼女はそう願っているにも関わらず、冒頭でも書いたように取材に応じたのに、オンエアでは悪意ある編集がなされていたり、テレビをつけても在日中国人が悪い発言をしているのを面白おかしく取り上げるような番組が多い。このような環境では、日本に来た外国人も、いつまでも「一時的にいるだけの場所」という意識が拭えず、住む町に愛着を持つことも難しいだろう。  Ayaさんのように、日本にいる外国人も共生を模索している。筆者も、使用SNSを活用したり主宰コミュニティで案内するなど、この活動を、そして日中の草の根友好関係の進展を、さらにAyaさんの日本生活が幸福に満ちたものになることを、この先も応援したい。
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日本における麻辣湯ブームのはしり
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四川麻辣湯
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