流行語大賞トップ10入賞の「ご飯論法」とは? 政府の不誠実答弁を許さない「名付けて退治」論

「名付けること」で問題に気づく言葉

 上西氏は語る。 「『ご飯論法』は“名付けて退治”の言葉です。30年ほど前に新語・流行語大賞を取った『セクシュアル・ハラスメント』と同じです。 加藤大臣に限らず、安倍首相も、他の大臣も、官僚も、平然と『ご飯論法』の答弁を繰り返しています。その問題を知ってもらいたいと、たとえたものです。 ビールを飲んでいるのに『酒は飲んでいない』と言い張るのと同じで、『そういうことね!』とピンとくる。面白くて理解しやすい。それが『ご飯論法』です。 『詭弁』と表現するだけでは、問題に気づけません。加藤厚生労働大臣の論点ずらしは非常に巧妙なため、見分ける言葉として『ご飯論法』が必要だったのです。 パンも何も食べなかったかのように質問者には聞こえる、相手を騙す意図を含んでいる。その問題を、わかりやすく可視化する必要があったのです。 『オレオレ詐欺』や『母さん助けて詐欺』といった言葉によって『振り込め詐欺』に気づきやすくなる、それと同じです」  実際、その奇妙なネーミングはSNS上でハッシュタグとともに拡散し、ついには野党議員が国会で言及し、新聞や雑誌で取り上げられるようにもなった。  その結果、「2018ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10の受賞であり、国語辞典『大辞泉』(小学館)による「新語大賞2018」の次点に選ばれたということに繋がったのだ。
uenishi

上西先生

「政府は問題を隠したいときに『ご飯論法』を使います。裁量労働制が濫用されて過労死につながったという現実を隠したい、高度プロフェッショナル制度によって定額働かせ放題が可能になって過労死の危険性が高まることを隠したい、そのような場面で『ご飯論法』が多用されました。  現在の臨時国会でも、『ご飯論法』は横行しています。技能実習生をめぐる劣悪な処遇や人権侵害が国会審議を通じて明るみに出されてきていますが、問題に向き合わないために、山下貴司法務大臣も『ご飯論法』を使っているのです。  不都合な事実に向き合わないまま法改正が進められれば、私たちの暮らしは脅かされます。問題の指摘には真摯に答える、噛み合った議論が国会では必要なのです。  なのに政府は、「ご飯論法」で野党議員を騙し、問題の指摘から逃げ続けています。この姿勢は、野党議員を愚弄するものであり、私たち国民を愚弄するものです。  国会がこんなに異常な事態になっていることを広く皆さんに知っていただき、不誠実なすれ違い答弁は許さない、と監視することが必要です。そのような現状を正していくために、「ご飯論法」を広く知っていただきたい。今回の受賞が、そのきっかけになることを願っています」 <取材・文/HBO取材班 撮影/横川圭希> 上西充子●うえにしみつこ。Twitter ID:@mu0283。法政大学キャリアデザイン学部教授。共著に『就職活動から一人前の組織人まで』(同友館)、『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社)など。働き方改革関連法案について活発な発言を行い、「国会パブリックビューイング」代表として、国会審議を可視化する活動を行っている。『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』の解説、脚注を執筆。
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