流行語大賞トップ10入賞の「ご飯論法」とは? 政府の不誠実答弁を許さない「名付けて退治」論

「ご飯論法」を生んだ加藤厚労相の論点ずらし答弁

 上西氏がこの論点ずらしを指摘した加藤厚労相と共産党の小池晃議員のやり取りはこんな感じだった。(※参照:国会PV「第2話 働き方改革―ご飯論法編」完成記念試写会 #国会パブリックビューイング 2018年12月1日 54分39秒~)  動画の引用箇所のやや前の部分から書き起こししてみよう。 小池議員:健康確保措置で、今、年百四日以上の休日と言ったけど、年百四日というのは週休二日で当てはまるわけですね。土日さえ休ませれば、盆も正月も祝日もゴールデンウイークも全部働かせてもいいんだと。しかも、毎週二日を休日とすることじゃないんです、これ。四週で四日以上です。だから、理論的に言えば、理論的に言えば、四週間で最初の四日間さえ休ませれば、あとの二十四日間は、しかも休日も時間制限もないわけだから、二十四時間ずうっと働かせる、これが、いや、論理的には、この法律の枠組みではできるようになるじゃないですか。私が言ったことが法律上排除されていますか。 加藤厚労相:委員が言われた働かせるという状況ではなくて、働かせるということであれば本来この制度というのは適用できなくなってまいりますので、そういった意味では、あくまでも本人が自分で仕事を割り振りして、より効率的な、そして自分の力が発揮できる、こういった状況をつくっていくということであります。 小池議員:高プロで労働時間の指示ができないという規定が法律上ありますか。 加藤厚労相:そういったことはこれから指針を作ることになっております。法律に基づく指針、そして、その指針にのっとって労使委員会で決議をしていただく、こういうプロセスがありますので、その指針の中身に今御指摘のことも含めて、これまあ法律が通ればの話ですけれども、労働政策審議会で御議論いただくことになるというふうに考えております。 小池議員:法律上全くないわけですね。 それで、私の質問に答えていないんですよ。四日間休ませれば、あとはずっと働かせることが、百四日間を除けばずうっと働かせることができる。計算すればこれ六千時間になりますよ、六千時間を超えますよ。これを排除する仕組みが法律上ありますかと聞いている。 加藤厚労相:ですから、今申し上げましたように、働かせるということ自体がですね……(発言する者あり)いや、働かせるということ自体がこの制度にはなじまないということでありますから、ですから、それを踏まえて、先ほど申し上げて、法の趣旨を踏まえた指針を作っていく、そして、指針に基づく決議を決めていただく、そして、決議は指針に遵守しなければならない、こういった議論がなされているわけでありますから、今委員おっしゃったようなことにはならないだろうというふうに思います。 小池議員:私は質問ちゃんと言っているんです。なるかならないかと聞いているんじゃない。法律上排除されることになっていますかと、私が今指摘したような働き方は法律上できないという規定に合っていますかと聞いているんです。 加藤厚労相:ですから、一般であれば、残業が命じられて、そしてそれにのっとって仕事をしなきゃならないわけであります。しかし、この高度プロフェッショナルはそういう仕組みになっていないんです。法の趣旨もそうでないんです。したがって、それに基づいた、先ほど申し上げた、法律に具体的にというお話がありましたけれども、その法案の趣旨を踏まえて指針にしっかり盛り込めば、それは法律的な効果を、先ほど申し上げたように生んでいくということであります。 小池議員:答えていないです、答えていないんですよ。  その趣旨がとかと言うけど、法律上そういったことが禁止されていますかと聞いているんです。イエスかノーかではっきり答えてください。 加藤厚労相:ですから、先ほど申し上げた仕組み全体の中でそうしたことにならないという形をつくっていきたいと、こういうふうに考えているわけであります。   ※  ※  ※   ※  ※  ※  ※  ※  ※  小池議員は、冒頭で「理論的に言えば、4週間で最初の4日間さえ休ませれば、あとの24日間は、しかも休日も時間制限もないわけだから、24時間ずうっと働かせる」ことができてしまうことを危惧し、そのようなことができないように法律上の規定がありますか? と質問している。「あるorない」を問われているのだから、シンプルに、かつ誠実に回答するのであれば「あるorない」で回答するのが普通だろう。  それを、加藤厚労相は「働かせるということ自体がこの制度にはなじまない」などと論点をずらしたうえで、「そういう仕組みになっていない」かのように聞こえる答弁をしたのである。実際には、そのようなことが起きる可能性が法律上排除されていないにも関わらず、である。  また、加藤厚労相は“一般であれば、残業が命じられて、そしてそれにのっとって仕事をしなきゃならないわけであります”などと言っているが、そもそも高プロ制には「残業」というものがないのである。1日の労働が8時間を超えてはいけないという規定がそもそもないのが高プロ制であり、8時間以上働くことを命じるのを禁じたり、8時間を超えた場合に割増賃金を払わないといけないという規定も使用者は守らなくていいのだ。  そういう話であるにも関わらず、「残業が命じられる、そういう仕組みになっていない」というのは、「そもそも残業という区切りがないです」と言っているだけで、「嘘をついていないのだけど、いいように聞こえる」という、敢えてミスリードさせて安心させる悪質な話法なのである。  国会答弁では「ご飯論法」が横行しており、上西氏の活動「国会PV」では、実際の国会答弁を素材に、ご飯論法の見分け方を解説した動画「【街頭上映用日本語字幕版】国会パブリックビューイング 第2話 働き方改革-ご飯論法編-(収録映像一覧情報あり)」も作成、配信している。
次のページ 
「名付けること」で問題に気づくことができる
1
2
3