このような入り混じった外交関係・内政関係の中で、今回のEU臨時首脳会議でスペイン政府が英国離脱に承認するためにEUが策を講じた。
その策とは、英国を除いたEU加盟国27か国とEU委員会は、ジブラルタルが絡んだ英国との交渉での合意は一切しないということと、ジブラルタルに影響することになる将来の合意には事前にスペインがそれに同意しておくことが必要だということを明文化して27か国が署名した書簡と、トゥスク欧州理事会常任議長とユンケル欧州委員長がそれぞれそれに同意して署名した書簡を用意したのである。
もちろん、これらは何れも法的拘束力はない。そのため、法的拘束力のない解決方法に同意したスペイン政府をを野党は猛烈に批判した。しかし、前掲のような背景もあるスペイン政府は、その妥協案を法的拘束力と同等の効力があると判断して英国の離脱に合意したのである。
ちなみに、蛇足ではあるが英国が抜けることになってEU加盟国の多くは内心喜んでいるという。というのは英国は常にEUが提案する事項に反対するのがお決まりで、EU進行の障害になっていたからである。
<文/白石和幸 photo by
pixabairis via pixabay(CC0 Public Domain)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身