プラズマエンジンをNASAと共同開発するコスタリカの零細ベンチャー企業が、水素エネルギーの未来を拓く

片田舎の零細ベンチャー企業が「持続可能国家」達成の鍵を握る

 水素エネルギープロジェクトがインビオの二の轍を踏まない保証はどこにもない。ただ、政府もフランクリン・チャンという不世出の英雄の顔に泥を塗りたくはないだろう。アルバラード大統領も、彼の会社が開発した水素バスで大統領就任式に颯爽と登場した手前、何もしないわけにもいくまい。  技術は揃った。すでに水素バスの実験車両はコスタリカ国内を走り回っている。NASAと仕事をしている企業のプロジェクトとあって、国内はもとより国外からの注目度も高い。行政府のリーダーシップと立法府の法整備はことさら重要性を持つ。  その頼りなさを承知で、アドアストラ社担当者は「やれることをやるだけ」と淡々と話す。政府がおいしいところだけ持っていこうとするのは、コスタリカではいつものことだ。だから、彼らはベンチャー企業という形で、あくまで民間主導で国家ビジョンの達成に持てる資源を投入している。  インビオの失敗は、母体がNGOであり、資金の確保が困難になったことが大きな原因だった。水素エネルギー開発はそもそも民間企業主導なので、ある意味初めから国の資金をあてにせず進められている。アドアストラ社は従業員わずか十数人の、片田舎のベンチャー企業だが、だからこそ身軽に「持続可能国家」への道のりをリードできる可能性を秘めている。今後も大いに注目だ。 「持続可能国家」コスタリカ 第8回 <文・写真/足立力也> コスタリカ研究者、平和学・紛争解決学研究者。著書に『丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略~』(扶桑社新書)など。コスタリカツアー(年1~2回)では企画から通訳、ガイドも務める。
コスタリカ研究者、平和学・紛争解決学研究者。著書に『丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略~』(扶桑社新書)など。コスタリカツアー(年1~2回)では企画から通訳、ガイドも務める。
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