午後1時から八幡浜市の江戸岡公民館で活動報告・意見交換会が開催されました。こちらは、参加者が30人となり、やはり8割強が愛媛、四国三県の方でした。
会場前方。日章旗の横の江戸岡地区旗の意匠が気になって仕方ありません。2018/11/11撮影
報告では、差し止め訴訟の薦田伸夫弁護士からの報告、各地での活動状況について、運動を進める上での悩み事も含めて活発な意見交換がなされましたが、やはり私の目を引いたのは、伊方発電所核燃料乾式貯蔵施設建設問題でした。このことについては当日の
配布資料がPDFで公開されています。
伊方発電所は、使用済み核燃料ピット(SFP:BWRの場合は、使用済み核燃料プール。BWRとPWRでは微妙に用語が異なる。)の容量枯渇が危急の課題となっており、発電所敷地内に寿命60年の使用済み核燃料乾式貯蔵施設の建設を愛媛県に申し入れています。
乾式貯蔵は、SFPに比して固有安全性が遥かに高く、安価であるために合衆国では完全に実用化していますが、日本では東海第二と福島第一、福島第二で試験運用中のみのため、伊方で初の本運用を行おうということです。
地元では、出力調整実験やMOX装荷に続けてまたしても伊方で最初(MOXは2番目)に始めようとすることへの反発と、伊方がなし崩しで使用済み核燃料の恒久的保管場所になる恐れ、伊方3号炉運転の恒久化などを承知できないとして、反対運動が始まっています。
かつて伊方3号炉建設に当たり、伊方町との協定で伊方には原子炉2基のみとしてきたものを四電が「所詮は紳士協定だ」として一方的に破棄し、3号炉建設を強行した経緯から、地元市民の四電への不信は根強いものがあり、少なくとも四電は紳士ではないという認識は共有されているようです。
したがって、例えば60年後の県外撤去、60年間開封しないと言った協定を結ぶという選択肢は四国電力が協定を遵守すると考えられないという不信が立ちはだかり、かなり難しいようです。かつて不誠実なことを行った企業は、たとえ電力会社であってもその事実が足かせになるということでしょう。とても残念なことです。
議論の中で、武井たか子県議より四電との折衝中に四電側から「直接処分という選択肢もありますから」という発言があったという報告があり、電力がすでに破綻した核燃料サイクルからの脱却(軟着陸)を模索している兆候が見出されました。福島核災害前なら、電力、経産ともに口が裂けても言わないような発言であり、私は大変に驚きました。安倍政権は、すでに日本原燃の処理スキーム(電力への債務の市民への付け回し)を完成させつつあるという指摘も数年前から出てきており、いよいよ常敗無勝国策の典型である核燃料サイクル政策の終焉がちらちらと見えてきた感があります。石炭政策が典型例ですが、経産省はある日突然に掌を返して逃げ出すことがたいへんに得意です。
マイクを受け取る武井たか子愛媛県議2018/11/11撮影
また、2016年7月から8月の伊方発電所周辺に異常な過剰警備について、その法的裏付けについて愛媛県警を問い詰めているという報告があり、県警は追い詰められ、回答に四苦八苦しているとのことでした。最近、伊方発電所正面ゲート前抗議集会の際に愛媛県警が姿を消している一因ではないかと私は感じました。
2016年伊方再稼働時の過剰(異常)警備について嵐のように情報公開請求を行い愛媛県警を追い詰めているという話。その根気強さには脱帽する他ない。2018/11/11撮影
その他、上関発電所問題や、新電力契約運動、高知県でNUMOの活動が活発化していることなど様々な報告と議論があり、あっというまに予定の16時に近づきました。
結局、16時前にはすべての次第を終えて、閉会となりました。
私にとっては、乾式暫定貯蔵に対する考え方が私と大きく異なることにたいへんに驚きましたが、私の気が付かなかった視点を多く得ることができ実りは多かったと思います。
サイクル・バックエンド問題の先送りはすでに限界に達しており、いよいよツケ払いのときが迫っていると実感します。時間と、懸案事項を甘く見てきたことが悔やまれます。
そのような思いを胸に、私は宇和の肱川上流を経て、野村、鹿野川へと向かい、この日は大洲で泊まりました。会場を退出する際に、恒例の袋いっぱい愛媛みかん(八幡浜でなぜか今治みかん)をもらって帰り、この原稿執筆時も美味しいみかんを食べています。
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会場後方 じつは横に絨毯の間があり、私と数人はそこに陣取りました。2018/11/11撮影
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上関発電所反対運動の寄せ書き 上関は、伊方発電所から視認距離で、過酷事故が起これば伊方発電所も愛媛も四国四県も巻沿いになりますのでよそ事ではありません。2018/11/11撮影
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グリーン市民ネットワーク高知の活動報告は、新電力との契約運動について2018/11/11撮影
『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』シリーズ2原発編-6-
<取材・文・撮影/牧田寛 Twitter ID:
@BB45_Colorado 写真/瀬戸の風(一部)>
まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題についてのメルマガを近日配信開始予定
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@BB45_Colorado
まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについての
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