「ヤード」と呼ばれる中古車解体などが行われる場所は外国人犯罪の温床だという(写真/時事通信社)
過剰労働だけでなく、いじめや暴行などの人権無視までもが横行していることが次々と明らかになっている技能実習生の問題。
まさしく「現代の奴隷制度」「現代の徴用工」と言っても過言ではない状況だ。
しかし、技能実習生に「嫌なら辞める」という選択肢はない。なにしろ、本国で借金を背負って来日している場合が多く、もし辞めれば即刻強制送還。後に残るのは借金を背負い、家族にまで迷惑がかかるかもしれないという恐怖も抱えているのだ。
そのため、「失踪」せざるを得ないという状況に追い込まれる。今年の失踪者は半年間で4279人にも上っている。このまま行けば、過去最高だった去年の約7000人を確実に上回るとされている。
失踪してもそれまで薄給でこき使われてきた身である。貯金などは当然ない。最悪の場合、それまでの給料も雇用先に握られていることすらある。本国に帰るにも費用がかかるし、前述したようにそのまま帰ることは家族に迷惑がかかるため、どこかで働かざるを得なくなる。仮にそれが「不法就労」になってしまうとしてもである。
こうした不法就労をした場合、不法行為であるのは確かにそのとおりなのだが、そのような背景があるのだ。それを無視して、一様に「犯罪者」扱いされることになってしまう。それは悪名高き入管も然り、メディアでの報じ方も然りである。
つい先日、実習先の建設会社から失踪して港区内の飲食店で東京都の最低時給以下で働いていたミャンマー人が逮捕されたことがニュースになったが、報道によれば、”「日本は稼げると聞いて技能実習に来た」「同僚から嫌がらせを受けて失踪した」”と証言しているというが、報道も彼らの不法就労を取りざたすばかりで、実習先でどのような嫌がらせがあったのかや、最低時給で働かせていた飲食店の問題などについては一切報じていない。(参照:
実習先から失踪し不法就労か ミャンマー人9人逮捕 TV朝日ニュース)
「なぜ彼らが研修先から逃亡せざるを得なかったのか」に目を向けずに、彼らを犯罪者扱いするだけでは問題は一切解決しないだろう。
そして、悪いことに、地獄のような職場から抜け出して救いを求めた「カタギの仕事」でさえ「犯罪者」扱いされる中、本当の犯罪組織や非合法の仕事への誘いが彼らを待ち受けているのである。