さらに、問題点の3については、同じく長妻議員の質問を公開した。(20181105・衆議院予算委員会)
日本で亡くなったベトナム人技能実習生らの葬儀を行うベトナム人僧侶がいる寺院を視察にいき、技能実習生が置かれた劣悪な環境についてヒアリングしたことを述べる長妻議員。失踪者はすでに今年の上半期だけ、わかっているだけでも4279人にも上るという事実や、残業だけで1か月200時間超にもなっていたことや、何人もタコ部屋のような環境に雑魚寝させられる住居の実態などを明らかにする質問が公開された。
「自殺や過労死される方が技能実習生に多いという事実が語られました。若くて健康な方が技能実習生として日本に来るのに、日本人の数倍の割合で自殺や過労死、あるいは事故死もあるのですが、そういうことが起きているんですね。未経験の初期のうちになくなるという統計が発表されいます。また、住環境の悪さ、ひどいところに住まわされて、高額な家賃まで取られるケースすらある。いじめや暴力などを含む人権侵害や労働法制違反があった中で、こんなとこで働けないと命の危機を感じて失踪する技能実習生も多い。それを、失踪したという事実、確かに失踪は違法行為かもしれませんが、まるで犯罪者扱いしている。逃げたほうだけが悪いのか? それは違うのではないかと指摘されています。こうした人権侵害が横行している事態をどうにかしてから、門戸を開くというならまだわかりますが、何もしないで改正するというのはどういうことか。こんな状況で入れていいのかという大事なポイントを指摘した質問だったと思います」(伊藤氏)
ブラック企業で働く日本人について、しばしば「嫌なら辞めればいい」という論調がある。それもどうかと思うほど酷い声だが、技能実習生や「嫌ならやめて他に行く」ことすらできないのである。そうした現状を放置したまま、単純に経済界からの要請で拡大するのは許されることなのか? メディアはメディアで、建設会社の技能実習で同僚から嫌がらせを受けて失踪して、港区の飲食店で最賃以下の時給900円だけで働いていた技能実習生を、まるで犯罪者であるかのように報じる。(参照:
実習先から失踪し不法就労か ミャンマー人9人逮捕 –テレ朝news)
就労資格がないまま働いたのは確かに問題かもしれないが、その前に彼らが失踪した元になった受け入れ先で何が起きたか、メディアはきちんと取材したのか。こうしたことが放置されたまま、人数だけ拡大していくのはあまりにも危険な話であり、いずれは日本の国際的な評価も失墜させかねない話なのだ。
さらに国会PVでは、現在の技能実習生に対して何も対処されていない現状について、共産党の小池晃議員の質問を提示して説明する。(20181107・参議院予算委員会)
ベトナム人技能実習生が12万人いるのに、ベトナム語対応できる相談員はたった一人という現状。これに対し根本厚労相は「もっとしっかり充実させたい」というだけ。安倍晋三首相も「今度は出入国管理庁というものをつくって体制を強化して、そういうものにも対応していくということでありまして」などと述べている。なぜそれを新設しただけで、現状問題山積みなのにうまくいくと思うのか? 疑問だらけの答弁であり、小池議員も「問題があることは認めたわけですよね。総理も現場に、それが来年4月になんで解決するんですか。来年4月に、今言ったことが実現する、なんでそんなことが言えるんですか」と突っ込んでいる。
「技能実習法は2017年11月に改正されて人権侵害の禁止や賃金などの条件も日本人と同等にしないといけないなどとされたんですが、実際そんなのは現状でまったく履行されていません。状態はまったく良くなっていない。相談対応もまったくできていないというのが小池議員の質問で明らかになりました。根本厚労相は『これから充実させる』などと言っていたけど、来年の予算案を見てもそんな予算措置は取られていません。何も手を打っていないんですよ。政府側は将来に含みをもたせて逃げたに過ぎません。また安倍首相の答弁は凄かった。『違反が蔓延しているじゃないか』と指摘されたら『そうです』と認めてしまうんですね。それで、『だからこそ新しい制度が必要なんです』と。新しい在留資格では登録支援機関が面倒も見るし的確な管理や指導をするからというんです。じゃあいままでの監理団体はなぜできないのか? 新しい機関はなぜできるのか? そうした疑問には一切答えられないんです」(伊藤氏)