悪徳業者に蝕まれる「再生可能エネルギー」事業。自然環境への影響も

事業者は都内の会社しかしその実体は不明

「鴨川の豊かな自然が気に入って都内から移住してきた」と語る藤井照久さんは、「突然こんな計画が出てきて、びっくりしました。でも、事業者はほとんど説明をしてくれない」と語る。  事業者は「AS鴨川ソーラーパワー合同会社」(東京都千代田区)。その中心は、地権者で太陽光発電事業者の「A-スタイル」(埼玉県川口市)と、建設会社の「大蓉工業」(同)。しかし、その実体は明らかにされていない。 「地元説明会にも、会社の責任者を名乗る人は現れませんでした。地域に属さない事業者が開発だけして転売したり、儲からなくなったら放り出してしまったりする可能性もあり、不安だらけです」(鴨川の山と川と海を守る会事務局・今西徳之さん)  事業者には、自然の回復は義務づけられていない。放り出された場合は、広大なはげ山とパネルが放置されてしまう可能性もあるのだ。九州電力は10月13日から、太陽光など再生可能エネルギーの発電事業者に一時的な発電停止を求める「出力抑制」を実施している。また、経産省は太陽光発電の買い取り価格を見直し、事業用は2022年度、家庭用は2025年度にも半額にするという目標を掲げた。この再生可能エネルギー優遇の固定価格買取制度(FIT)も、いつまでも続くとは限らない。
再エネ発電促進賦課金

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 しかし、地権者はこの豊かな自然が破壊されることに何の抵抗もしなかったのだろうか。 「予定地は40数年前、5つの集落の入会地がそっくり買われ、この間、産廃物処理場・ゴルフ場・リゾート開発等が造成しないまま頓挫し、転売を繰り返してきた土地です。地権者が少なく、まとまった土地があることで、メガソーラー業者に目をつけられたのでしょう」(勝又さん)

メガソーラーの場合は自然環境は永遠に戻らない

 メガソーラー建設の悪影響をシンポジウムなどで訴えている、高田宏臣さん(高田造園設計事務所・代表取締役)はこう解説する。 「山地に造られるメガソーラーの最大の問題は、自然本来の地形を、これまでにない規模で根こそぎ削って平らにしてしまうこと。例えばゴルフ場も森の貯水機能を大きく奪いますが、地形が残っている限り、環境の再生は可能。しかし、メガソーラーの場合は、自然環境の力は、未来永劫戻ってきません」  さらに高田さんは、「自然の地形には意味があるんです」と語る。 「環境上あるいは防災上の要の地が、山頂部尾根筋や谷筋です。だからこそかつては、集落の裏山の山頂部に祠を置いて一帯を鎮守の杜として守り、そして水の湧き出す谷筋には龍神様を祀って、触れない場所を設けてきました。現代はそうした先人の叡智が忘れ去られ、守るべき健康な自然環境も蹂躙されて顧みられず、その結果として水害土砂災害を増幅させている、その果ての際たるものがメガソーラーと言えるでしょう。これは何としても止めねばなりません」
送電線の場所から土砂崩れ

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 太陽光発電は、再生可能エネルギーの主役といった良いイメージだが、一般家庭の太陽光パネルとメガソーラーは大違いなのだ。 ― [再生可能エネルギー]の不都合な真実 ― 取材・文/北村土龍 写真/桐島 瞬
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